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「例えば、地元辻堂の、馴染みの店で会う仲間たち。みんな普通の人たちばかりですよ。ただそれぞれに大事にしていることがあって、自分なりの暮らしがあって、そのなかで自由に生きている。その生き様にスタイルを感じるし、カッコ良く見えるんですよね」。

「例えば、地元辻堂の、馴染みの店で会う仲間たち。みんな普通の人たちばかりですよ。ただそれぞれに大事にしていることがあって、自分なりの暮らしがあって、そのなかで自由に生きている。その生き様にスタイルを感じるし、カッコ良く見えるんですよね」。


三浦 作為だねぇ(笑)。俺は15歳で波に乗り始めた当時、周りの先輩たちはストレートのデニムにネルシャツやパーカを着ていて。当時そういう服の着方を知らなかったから「カッコいいな」と思って。

で、その先輩のひとりがサーフボードのシェイパーなんだけど、70歳の今も当時と同じ格好してるの。変わってないけどカッコいいんだよね。種さんも最初に言ってたように、身体に馴染んでるっていう。

渡辺 有名人や芸能人よりも、ずっとカッコいい人は身近にいます。90年代にたくさん雑誌を見てきましたが、いちばん萌えていたページはストリートスナップ。ミラノやロンドン、東京の、普通の街の人たちです。

取材で「何から影響を受けていますか」と聞かれると、いつも「街の人です」と答えてきました。今でも移動で自転車に乗っているのはたぶん、街の人の姿が見えるから。

そう考えると僕はやっぱりファッションの人。ちょっと離れたところから、憧れを持ってリアルな人たちを見つめているんです。

種市 僕もセレクトショップ育ちですから、似たところがあります。サーフィンにしてもスノーボードにしてもある程度は滑れるようにしておきますが、それはいざというときに何もできないのはカッコ悪いから。でも中途半端といえば中途半端。それは自覚してます。

「仲間を見よう、と言いたいです。類は友を呼ぶというように、仲間うちでいいなと思うものこそ、スタイルの源流になるんですよ。ヒップホップもそうだし、時代を遡ればトラッドもそう。身近なコミュニティを見渡すだけで、スタイルの実像が浮き彫りになるんです」。

「仲間を見よう、と言いたいです。類は友を呼ぶというように、仲間うちでいいなと思うものこそ、スタイルの源流になるんですよ。ヒップホップもそうだし、時代を遡ればトラッドもそう。身近なコミュニティを見渡すだけで、スタイルの実像が浮き彫りになるんです」。


渡辺 僕はゴルフやボクシングをやるんですが、やっぱり上手いほうが楽しいだろうなとは思います。でも今は、楽しめればいいかなとも思う。

ファッションの文脈でスタイルを語ろうと最初に言ったのは僕ですが、どうしてもカルチャーが絡んできちゃいますね。改めてファッション視点のスタイルで言うと、自分が少し違和感を感じるようなコーディネイトを心掛けています。違和感がないと進歩がない気がして。

 種さんも同じような視点がありますよね。

種市 サーフィンのときにあえて街の服を着たり、その逆をやったり。類型的にならないようにいつも新鮮な気持ちで、好奇心を持ち続けたいなと思っているんです。そういう人のほうが、若々しく見えますしね。

 そこ、共感します。でもアンチエイジングではなく、グッドエイジングがいいなと。種さんがよくいう枯れ感とか、年齢なりのアジャストとか……それがオーシャンズという媒体としても素敵だなと思っていて。

渡辺 何度も翻るんですが、そう考えると、やはりスタイルは人生そのものですね。場所、時代、時間、一緒に過ごした友達によって、いろいろな影響を受けてくる。生まれたばかりのときはノールール、ノースタイル。

思春期を経てルールを作って自分なりのスタイルができる。そして老人になってルールがなくなり、最後にはスタイルが消えていく。それはとても叙情的で、美しいなと思うんです。

三浦 今日は勉強になるなあ。聞くばかりで、全然喋ってないかも(笑)。

渡辺 三浦さんは喋らないのがいいんですよ。オーシャンズの読者に「ここ(三浦さん)に向かってます」と伝わればそれで。だからこそオーシャンズの“モデル”なんですよ。

三浦 うれしい〜。

渡辺 スタイルって、考えていくプロセスが楽しいんです。それを自然体でやってしまう三浦さんは理想ではあるけれど、そこに向かって考えていく人こそ、雑誌の読者であると思いますし。つまり、ゴールが三浦さんで、プロセスがオーシャンズ。

種市 マーシーさんはカッコいい先輩に囲まれて、サーフィンやって、料理やって、畑やって……そういうスタイルが逆に今、ファッションになっている流れも面白い。ファッションとスタイルは、結局ぐるぐると回り続けているのかもしれませんね。


OCEANS6月号「スタイルある男たち」から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック


箱島崇史=写真 加瀬友重=文

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