スパイク・ジョーンズ。映像ディレクターとして1990〜2000年代のカルチャーを牽引した存在。仕事にも服にも、東海岸らしい洗練が漂う。写真:Shutterstock.com
原 人間性の憧れは談志師匠ですが、スタイルの憧れは
スパイク・ジョーンズ。ストリートムービーの制作とか、その仕事もめっちゃクールで。
渡辺 好きなものがはっきりしていますよね。スケートが好きで、写真撮って、ビデオ撮って。やっぱりカッコいい。原さんはカルチャーありきのファッションが好きなんですね。
原 背景あるカルチャーが大事かなと。僕はサーフィンをやらないから、自分がサーフブランドを着たらおかしいなと思うんです。聴いたことのないバンドのTシャツを着るのにも抵抗がある。
種市 僕の場合、ファッションに振り切って思いきり楽しんでいるならリスペクトしちゃう。とにかくこの色が好きだとか、手持ちの服とすごくバランスがいいからとか。そういう理由ならアリだと思う。
渡辺 どちらもわかります。「本人レゲエじゃないのにボブ・マーリーのTシャツってどうなの」的なことは、確かに僕らの世代にはあった。でも今の若い子たちは全然気にしていないし、ファッションとして成立している人もたくさんいます。
原 そのカルチャーを通っていなくても、スタイルになりうるんですね。
種市 そこに愛があればいいんですよ。
ドリス・ヴァン・ノッテン 2024-25秋冬 レディ・トゥ・ウエア コレクション。40年近くクリエイションを率いたドリス。2025年春夏メンズを最後に、惜しまれつつも退任。写真:AP/アフロ
原 ドリス・ヴァン・ノッテンがとある海外誌のインタビューで「ファッションではなくスタイルを作りたかった」と言っているのを読みました。
超要約ですが、そのスタイルを作るテクニックのひとつが「真逆のものを組み合わせる」こと。スウェットシャツにスパンコールを合わせるとか、テーラードにゆるいシャツを合わせたりとか。
渡辺 その公式こそ、ファッションになりやすいとも言えますね。自分のようなストリートの男がかちっとしたジャケットを着ると、何だか面白い。スーツの人がスニーカーを履くと、それがスタイルに見える。合わせ方のレシピが、ドリスはすごく巧みなんです。
>後編に続く
OCEANS6月号「スタイルある男たち」から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック!