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リンさんおすすめメニューと地元の食べ方

「野蒜肉未」1848円

「野蒜肉未」1848円

こちらは野草の野蒜(のびる)と豚ひき肉を炒めた季節限定メニュー。

味付けは「これがないと貴州料理はできない」という、唐辛子を塩と白酒で発酵させた「糟辣椒」を使用。とにかく辛いのだが、そのなかにも発酵の旨みを感じることができる。

「日本人は貴州料理にお酒を合わせる人が多いんだけど、貴州では白米。この料理はご飯にぴったりで、これだけで白米2膳は食べられる。貴州料理は米に合うから、すぐにお腹がいっぱいになるんだよ」。

その言葉通り、ビールを飲んでも辛さの余韻が全く消えないのだが、米を合わせると、意外にも辛さが和らいでいることに気づく。



ちなみにお酒といえば、貴州は茅台酒(マオタイ)の産地としても知られている。

「中国でナンバー1のお酒。すごく高価だから『買う人は飲まない、飲む人は買わない』って言われていて、偉い人にお願いごとをするときに差し入れをするお酒だよ」。

ご近所にある中国食材店では、なんと1本5万円以上の値段がついていた。“自分で買っては飲まない”というのも納得の値段だ。

「泡菜炒鸡珍」1518円

「泡菜炒鸡珍」1518円

さて料理に戻って、続いては、乳酸発酵させた野菜の漬物と砂肝を炒め合わせたもの。

こちらも非常に辛いのだが、酸っぱさも感じられ、先ほどとは違う辛さを楽しめる。

「折耳根炒腊肉」1848円

「折耳根炒腊肉」1848円

貴州料理に欠かせない香味野菜がドクダミの根。これがなくては生きていけないという貴州人もいるほど、現地ではお馴染みだという。

こちらがドクダミの根。

こちらがドクダミの根。


「中国でも食べるのは貴州・四川・湖南の人ぐらい。日本ではなかなか売っていないので、日本の友人に頼んで育ててもらってる。日本のお客さんは、女性は10人中8人は好きだけど、男性は逆。でもハマるとやめられないよ」。

ドクダミには、利尿作用や代謝を高める効果も期待でき、漢方としても人気。

苦味とほんのりと感じる土の香り、そして塩気のある辛さは、珍しい味だが確かにクセになりそうだ。

「灰豆腐火鍋」0000円(2人前から注文) 売切次第終了

2人前から注文、売切次第終了


「灰豆腐火鍋」4950円

そして、店名にもなっている火鍋が登場。今回は、最近まで里帰りをしていたリンさんが現地で買ってきた「灰豆腐」を使った火鍋をオーダーした。

灰豆腐とは、明の時代(1368〜1644年)から伝わる貴州の特産品で、お茶の枯れた枝を燃やして灰にし、その中に木綿豆腐を入れて一晩置いたもの。

灰豆腐は水で戻して使用

灰豆腐は水で戻して使用される。


どんな味がするのか……と心配をしていた灰豆腐だが、弾力のあるがんもどきのような食感で、クセもなく、わりと抵抗なく食べられる。

火鍋のスープにはもちろん唐辛子が使われているのだが、散々辛いものを食べた後だからか、辛いはずなのに、優しい味に感じられるのだ。

手前左の小皿に入っているのが、オリジナルのつけだれ

手前左の小皿に入っているのが、糊辣椒のつけダレ


「貴州の鍋は、つけダレでそのお店がおいしいかどうかを見極めるの。でもこれは多分日本人には無理だと思うね」と、ニヤリとしながらテーブルに置いていったのは糊辣椒のつけダレだ。

箸の先につけて舐めてみると……痛いほど辛い! 「さすがにこれは無理だ!」と思っていたのだが、食べ進めるうちに、少し付けるぐらいならと、徐々に辛さがクセになってくる。



どの料理も、汗をかくほど、とてつもなく辛いのだが、それぞれの料理で違う旨味があって、決して辛いだけの料理ではない。さらに体にも良さそうな味なのだ。

そう思いながら、リンさんを見ると、54歳とは思えないほど肌がツヤツヤしている。



「発酵食品は体にいいからね、貴州の女性はみんな肌がきれい。初めて貴州料理を食べる人は、お腹を下すことが多いんだけど、それは腸に効いているってこと。

むしろ下さない人の方が、体の反応が鈍い状態なんじゃないかな。だから、お腹を壊すぐらいがちょうどいいんですよ」。

お店を出るころには、体が内側からポカポカして、なんだか体が軽くなったような気分になる。明日の腹の調子が心配なような、楽しみなような……そんな思いを抱えながら、新小岩の店を後にした。
貴州火鍋


住所:東京都葛飾区新小岩1-55-1 多田ビル1F
電話:03-3656-6250
営業:17:00〜22:00(平日)、12:00〜15:00、17:00〜22:00(土・日曜)
定休日:水曜


松園多聞=写真 林田順子=取材・文

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