スマホやパソコンで日々、目を酷使している現代人。それだけ使っているのだから、目に不調が現れるのは当然のこと。では、どんな目のケアをしたらいいのか。
深作眼科の深作秀春院長が本当に効果的な目のケア方法を教えてくれた。
話を聞いたのはこの人!
深作秀春⚫︎医療法人社団秀仁会深作眼科院長。国立滋賀医科大学を卒業。1988年に同院を開院。神奈川と東京にある病院には全国から患者が集まる。国際眼科学会で最高賞を20回も受賞。世界最高の眼科外科医の称号であるクリチンガー・アワード受賞者。『白内障の罠』『緑内障の真実』『視力を失わない生き方』(光文社)、『100年視力』(サンマーク出版)など、著書も多数。
目のマッサージはNG!網膜剥離や白内障の危険性も
――最近、目が疲れやすくなって。目のセルフケアって、効果はあるのでしょうか? もちろん、適切なケアをすれば、効果はあります。
まずは眼精疲労。これは筋トレと同じだと思ってください。例えば同じ部位ばかり鍛えていると、疲れて攣ることがありますよね。そして攣ると筋肉が硬くなって、痛みが出てくる。
目も同様で、パソコンやスマホなど、近距離ばかりをずっと見ていると、ピントを調整する毛様体筋が凝り固まってきます。それでも同じ距離を見続けていると、目の周りがだるくなったり、痛みが出て、やる気がしなくなる。
なので、1時間に5分ぐらいは遠くを見るようにしましょう。視線は最低でも5mより先。できれば遠方の山とか自然を見るのがいいのですが、オフィスワーカーは難しいでしょうから、窓外に見える景色でも十分。ぼんやりと眺めることで、目の疲れが緩和されます。
――それなら簡単にできそうです! また、疲れを取るのであれば、ホットタオルで目を温めて、血流を良くするというのも有効です。
――あれ、気持ちいいですよね! 血流を良くするのであればマッサージはどうでしょう? 目の周囲の骨の部分で、押すとイタ気持ち良いツボを、軽くゆっくりと押すのは良いのですが、目自体は絶対に押さないでください。目というのは剥き出しになっている臓器です。つまりそれだけデリケートな部分ということ。
目は脳みそや豆腐のようなものだと思ってください。これらを強く押すと潰れるでしょう? その目を間接的にでも触るというのは、想像以上に危険なことで、網膜剥離や白内障を引き起こす可能性があります。
眼球を上下左右に大きく動かすトレーニングも一時期、話題になりましたが、これもNG。眼球の内部には硝子体というゲル状の物質があるのですが、この運動によって硝子体繊維の端に付いている網膜が引っ張られて破けてしまう危険があるのです。
一時期、「眼トレ」と呼ばれるような筋トレもどきの方法が紹介され、激しく目を動かしたことで、多くの網膜剥離が起きて、手術した症例が多くあります。こんなトレーニングなどは絶対してはなりません。
とくに50代以降になると、硝子体が収縮して、水と入れ替わるため、網膜剥離のリスクが高まります。
繰り返しますが、マッサージをしたいのであれば、こめかみや眉の上など、眼球に触れない骨の部分のツボを押しましょう。イタ気持ちいいぐらいで刺激することは、血流を促すなど、それなりの効果があると思います。
――気になったのですが、目の上に触れちゃいけないということは、目を擦ることもダメってことですか? その通りです。目をやたらと擦ると、網膜剥離を起こすリスクが高まります。
――花粉症で、つい目を擦ってしまうことがあるのですが……。 目がかゆい時は目薬を指すようにしましょう。間違っても、目を洗ったりしてはダメです。昔、プールに入った後、目を洗う水道がありましたよね? あれ、今はほぼ全て撤去されているんですよ。
――そうなんですか!? 目を洗うとすっきりとした感じがして好きだったのですが。 目の表面には、目に潤いを与えて細胞を守ったり、水分の蒸発を防ぐ油の層や、角膜の保護作用の働きをもつムチンという蛋白質成分があります。ところが、目を洗うと、こういう大切な成分が流れてしまう。目を守るものを除去して、ドライアイのリスクを高める行為なんです。
目の中にゴミが入ったというような臨時の場合以外は決して目を洗ってはいけません。その危険性がわかったから、目を洗う水道もプールから撤去されたということです。
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