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イタリア人の想像を遥かに超えるフルーツサンド!

パンといえば、僕にとってはサンドイッチとは別物だと考えている。イタリア人である僕には、アレコレ組み合わせた“あのアレンジサンド”は想像もつかないものがある。

イタリアでは好きな食材やチョコレートクリームなどをパンに挟んで食べる習慣があるけれど、フルーツというアイテムを使った「フルーツサンド」は思わず声が出るほど、僕の想像を遥かに超えてきた。そもそもフルーツをパンと組み合わせるなんて……この使い方は日本人にしかできない発想だ。



ちなみに、日本にフルーツが広まったのは明治初期頃。当時はとても高価なものだったけど、大正時代に入ると、果物専門店が「手軽にフルーツを楽しんでもらいたい」という熱意から、フルーツパーラーやジュース、フルーツサンドなどの提供を始めたことがきっかけとされている。

その先駆けとして最初にフルーツサンドを出したのは、千疋屋総本店が1868年に開業した「果物食堂(のちの千疋屋フルーツパーラー)」だ。

イタリア人として、甘いフルーツをパンに挟むという発想はまったくなく、フルーツはそのまま食べるか、ジェラートと一緒に楽しむ程度だ。もしパンに乗せるならジャムがあるけど、フルーツそのものではない。フルーツとパンを一緒に食べるなんてことは考えもしなかった。

しかも、フルーツだけではなく、ホイップクリームもパンに挟むことを考えると、ますます言葉を失うのだ。

フワフワのパンに自然な甘さと食感、ホイップクリームというアクセントも加えて、人生に隠れている本当の幸せを見つけた気分になれる。



この流れで、パンに炭水化物を挟むという、最高のおかずパンの話をしよう。日本発祥の「焼きそばパン」である。大前提としてイタリアでは、パスタを食べるかパンを食べるかどちらかで、ふたつの炭水化物を一緒に食べるという食文化がない。

焼きそばパン発祥の店のひとつといわれている、1921年(大正10年)創業の「サンドウィッチパーラー まつむら」(人形町)。開発者の松村牧子さんが言うには、「深く考えず、焼きそばをロールパンに挟んだら美味しいんじゃないかって」というかなりシンプルな発明だった。

やっぱり、深く考えてしまうと、僕が初めて焼きそばパンを見たときのような衝撃的な商品はできない気がする。このような日本発祥の物語の続きはまだ長く、僕の情熱も一生止まらない気がするから、この記事では一旦ここまでにしておこう。


一見、海外のものに見えるけど実は日本発祥という素晴らしい料理が、日本国民を支えているに違いない。日本に来てよかった理由のひとつは、まさしくこれなのだ。

日本現地でいつも美味しいものを味わってる僕は、もはや日本から離れることを考えられない。イタリアにUターンしたくないというか、恐らくできないだろう。

この記事の執筆中、ずっと我慢していたから、とりあえずフルーツサンドを食べに行ってこよう。

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マッシ=写真・文 池田裕美=編集

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