最も苦労したのが”わざと”イビツに見せる縫製や糸の色見
藤原 今回の新作は、僕が監修した書籍『LEVI'S VINTAGE DENIM JAKETS TYPEI/TYPEII/ TYPEIII』の中で紹介していている1920年代製のデニムジャケットをフィーチャーしています。いわゆる”NO.2デニム”と呼ばれるものです。
NO.2デニムとは、1890年〜1943年頃まで作られたファーストタイプの廉価版と言われているもので、薄手の生地感が特徴。糸の風合いや生地感に至るまでこのモデルを再現したものは見たことがなかったので、細川さんから「NO.2デニムでやりたい」と言われたときは「さすが!」のひと言でした(笑)。
こだわりの色落ちや加工を表現しつつ、©SAINT Mxxxxxxのパターンに落とし込み、長年ヴィンテージを見てきた藤原氏ならではのマニアックな視点から、縫製や色味など細部まで再現している。
細川 デニムジャケットを作るからには、説得力が欲しかったと言いますか、マニアの方が見ても納得のアイテムを作るにはプロの目が必要だと感じ、藤原さんにお声がけをさせていただきました。
作業で大変だったことは、不規則な縫製や繊細な色味などを再現したこと。例えばステッチひとつをとっても幅が左右で違ったり、縫い方もいびつで不揃いになっていたりするなど、あえて雑に作ること、ラフに仕上げることに苦労しました。
やりすぎてもいけないし、そのさじ加減といいうか。ステッチの色も、何度試作をしても同じような色味が出なくて。ようやくここまで完成して、とても満足しています。
手前がデザインソースとなった20年代製のモデル。当時のデニムジャケットはシャツやブラウスに近い存在だったことから、小さなボタン(通称”小(こ)ボタン”)を備える個体も少なくなかった。
カリ サンプルがLAの自宅に届いたときは、あまりのクオリティの高さに驚きました。おかげで心臓発作を起こすかと思ったほど(笑)。もちろん冗談ですが、真面目な話、本当にカッコよくて私からは何も言うことがありませんでした。
なぜならこの二人はファッションのプロであり、特に藤原さんはデニムのプロフェッショナル。海外でも絶対に人気が出ると確信しています。
濃色のインディゴの色味も忠実に再現。また繊細な錆が際立つボタンは、オリジナルのものを鉄製で作り塩素で加工している。糸の風合いと同様、この錆加工も、何度も試作を繰り返してようやく仕上げた渾身のパーツだ。
細川 シルエットはボックスのショート丈ですが、ヴィンテージのGジャンにはない、今っぽい形に仕上げています。ストリートでもカジュアルでも違和感なく着られますし、生地は11オンス程度の薄手のデニムなので、とても着やすいです。
藤原 ヴィンテージ業界の人からは、すでに「ほしい!」という声をいただいています。プロの方々が認める高いクオリティなので、早くみなさんの手にとっていただきたいです。数年後には数ある古着と肩を並べるような、新たなヴィンテージアイテムとなっていたらうれしいです。
その形状から通称”ハリ”と呼ばれるシンチバックもしっかりと装備。加工による錆ついた表情にも注目だ。
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