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トリビア③ 日本はアレンジパスタ帝国だった

日本のパスタ事情を見ると、ショートパスタだとグラタンのような使い道が多い。グラタンのような料理は、イタリアではどちらかというとミートソースも加えられたラザニアに近い気がする。日本のようにベシャメルソースのみにパスタとチーズを加えてオーブンで焼き上げるという料理は、日本に長く住んでいる僕にとって新発見だった。

ラザニア自体も日本では人気がある料理だろう。その理由のひとつは、ラザニアが既に日本人の口に合うグラタンのような料理だからだと言える。

日本ではロングパスタが大人気だ。イタリアのように熱いうちに食べるのが正義な料理もあれば、日本で夏によく見る冷製パスタもある。日本人にとってパスタのキングといえば、おそらくスパゲッティになる可能性が高い。蕎麦とうどん、そうめんとよく似た形で違和感がなく、安心できる。



日本に住み始めた頃、パスタ大国出身の僕が腰を抜かした料理があった。イタリア人から見ると考えられない組み合わせの「納豆とオクラ」「大根おろしと大葉&醤油」「ケチャップソース」などの和風パスタだ。

イタリアの食文化のシャッターが一瞬で閉められるようで、これはイタリア料理とはまったく別の知識が必要だと、当時はフォークを置いてしまった苦い思い出がある。現在ではもちろん大好きなメニューで、特にケチャップソースのナポリタンは定期的に食べたくなる。

イタリアのパスタはどの国に行っても愛食されていて、現地で食べたものでも自分で作ったものでも喜んでいる人が多い。その理由のひとつはパスタの食べやすさ、ふたつはアレンジしやすいシンプルさだろう。それぞれの国にある味と食べ方によく合うし、調理法も茹でるだけで簡単だ。


日本に住んでいる僕も、イタリアのパスタと日本のワサビとの素晴らしいであろう組み合わせを思いついて作ってみたら、涙が出るほど美味しかった。それを、X(旧Twitter)に出したらバズってしまった。

ワサビ以外にも、おすすめの食べ方がある。気になるあなたはぜひ、シンプルなトマトソースに醤油を掛けてみてほしい。イタリアで考えられない美味しいマリアージュが生まれるだろう。



ここで驚きのパスタの話をひとつ。名古屋市にある「喫茶マウンテン」では、「甘口抹茶小倉スパ」と「甘口イチゴスパ」を食べられる。イタリアでは絶対にない甘い系のパスタや考えられないソースがたくさんあるのだ。

試しに日本在住のイタリア人の友達と食べに行ったら、意外にも僕も含めて全員が喜んで食べた。文化のシャッターが開いた瞬間だった。このような体験をするたびに、自国から出て日本に来て良かった、と心から思うのだった。


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