「日常に潜む社会の闇」とは…… 富士の樹海やゴミ屋敷潜入など、日本社会の裏側を20年以上ルポしてきた村田らむさん。
今回は女性をターゲットにする“イケおじ”詐欺師の話。パートナーや娘など身近な女性が騙されないように注意してくれ!
案内人はこの方! 村田らむ●1972年生まれ。ライター、イラストレーター、漫画家。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海など、アンダーグラウンドな場所への潜入取材を得意としている。キャリアは20年超え、著書も多数。自身のYouTubeチャンネル「リアル現場主義!!」でも潜入取材や社会のリアルを紹介している。
「この人は信用できる人間か?」。
他人に対して見極めるとき、何を材料に決めているだろうか? 多くの人は「見た目」「話し方」「羽振りの良さ」など、意外とフワッとしたモノを頼りに決めている。
とは言いつつ、人間の勘というのは馬鹿にできないものだから、意外と見抜ける。渡る世間に鬼ばかりでもないから、「何のトラブルもなく終わった」ということも多い。ただ、それはたまたま運が良かっただけだ。“騙すプロ”に目をつけられたら、身ぐるみを剥がされていたかもしれない。今回は、被害にあった女性の話だ。
見た目もよく資産があることで信用してしまう
写真はすべてイメージ。実在の人物や団体などとは関係ありません。
その女性が詐欺の被害に遭ったのは、彼女が20歳の頃。地方都市で風俗嬢をしていた。デリバリーヘルスと呼ばれる職種で、客が指定したホテルや家に出向いてサービスする。
その人は初めての客に呼ばれて、客の家に出向いた。
豪華でオシャレなデザイナーズマンションだった。40歳くらいのイケおじで、がっつかなくて“いい客”だった。サービスが早めに終わりピロートーク気味に話していると、「将来、何したいの?」と聞かれた。
当時、彼女は風俗のかたわらマルチビジネスをやっていた。その話をすると、イケおじは真剣な顔で話し始めた。「それネズミ講って詐欺だよ? お金は大事だからね。もっと真剣に考えなよ」と。
そういうと男は立ち上がり、部屋にある金庫を開けた。金庫から1000万円の札束を取り出して見せてくれた。戸棚にはハイブランドの時計が並んでいたし、車庫には高級車が何台も駐車されていた。
今まで一度も見たことがなかった圧倒的な“裕福”さを目の当たりにし、彼女は一気に男性を信じた。
「俺にお金を預けたら、俺が海外の投資先に一口20万円で投資する。すると一口ごとに月に5000円の金利がつく。ある程度投資したらその利益だけで食べていくことができる。これが頭の良い暮らし方だよ」。
その後、彼女はデリヘルで稼いだ金のほとんどを、イケおじに“投資”した。また勉強会との名目で家に呼ばれた際は、ただで性的サービスをしたが、「それで賢い稼ぎ方を教えてもらえるなら、むしろ安いものだ」と思った。
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