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殺し屋を休業、“フツウ”の暮らしに挑む主人公



主人公は殺しの天才・佐藤 明(アキラ)。ただし、本名も年齢も国籍も、実際のところはわかりません。そんな殺し屋が大阪のとある街に行って「1年間、誰も殺さずに過ごせ」っていうミッションをこなしていく物語です。

最初、アキラはまったく人間味がないんですよ。でも、人と触れ合っていくことで、徐々に人間らしさが増して行く。そこがめちゃくちゃ魅力的ですね。

アキラの相棒は、同じく殺し屋の訓練を受けてきた佐藤洋子(ヨウコ)。アキラの妹という設定だけど、もちろん血は繋がっていません。

このヨウコってキャラがアキラにいろいろ物事を教えていくんです。人とのコミュニケーションや言葉使い、仕事探しも手伝ってましたね。後で話しますが、ヨウコの酒癖は最悪です(笑)。



で、アキラが所属する真黒(マグロ)組の若頭・海老原。この人もアキラに人間というものを教えてくれる存在ですね。彼は相当いいキャラしてます。

最初は殺しの天才であるアキラをめちゃめちゃ警戒して、街から追い出そうとするんだけど、結局、2人は深い信頼関係で繋がっていく。俺が思う『ファブル』の最初のハイライトは、海老原とアキラのここのやりとりじゃないかなって思ってます。

アキラ できるならこの一年――誰も殺さずに静かに暮らしてみたい! この町で過ごさせてくれ‥‥

海老原 なァ―― 佐藤―― お前が思う命ってなんやぁ――?

アキラ
 さぁ―― 考えた事なかったな――

海老原 だろうよ! でないと仕事にならんよなァ〜〜 俺が知ってる命ってのはよォ―― この理不尽な世界で唯一 平等で大切なもんや! たったひとつしかない―― それを散歩しながら奪ってくようなヤツを―― この町に置いとくワケいかねーわけや!

アキラ 散歩しながら殺したことは一度もないが――

海老原 だったら答えろや! お前の思う命ってのォ―― 今 考えろやァ〜〜!!

アキラ ん〜〜〜 うまく言えんから――‥‥違う話になるかも知れんが―― この間――インコを買った―― ズグロ‥‥なんとかインコや! 19万もしたが‥‥まぁいい―― 初めて動物を飼ってみたが‥‥大事に育てたい そう思ってる―― 今はこんな感じとしか言えん―― あっ‥‥名前をカシラとつけた――

海老原 何ィ!?

アキラ いろいろ試してそう呼んだら飛んできた!

ここはすげー大事な場面。後々のアキラを見てると、このときの答えを貫いてるんですよ。絶対、誰も殺さないじゃないですか。



ちなみに海老原は37歳くらいで、彼を含めて『ファブル』に出てくるおじさんはイケメンじゃないし、一般的に言うカッコいい人ではないけど、味のある、ちゃんと話のわかるおじさんが多いんですよ。そこも見どころですね。


4/5

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