▶︎すべての写真を見る 江戸時代から続く魚問屋が親会社のワイナリー「SAYSFARM」。華やかな香りと豊富なミネラルが特徴で、魚介との相性が抜群だ。
しかしなぜ“海の男たち”がワインを作ったのか。ディレクターの飯田健児さんに詳しく伺った。
ワイン不毛の地にできた海一望のワイナリー
能登半島の東側の付け根、富山湾に沿って位置する富山県氷見市。元日の能登半島地震で同県は観測史上最大の震度5強を記録し、氷見市も甚大な被害に見舞われ、一時はほぼ全域で断水。
震災から1カ月が経過し復旧・復興に向け動き出してはいるが、街の中には今も手付かずの倒壊住宅を目にすることができる。
日本海を一望する丘陵地にあるワイナリーのSAYSFARMも被災した。幸い被害はわずかであったことから1月5日にはオンラインストア商品の発送作業を再開。「少しでも地域復興の財源に」という気持ちから、ワイナリーで販売予定だったワインとジュースのセットを返礼品に、ふるさと納税にも出品した。
本来、氷見の冬は全国的に知られる寒ぶりで賑わう季節。富山湾は海産物の宝庫で、日本海に生息する魚介類800種のうち500種が獲れるといわれる“天然のいけす”だ。その豊かな海の恵みを求めて例年多くの観光客が訪れるのだが、今冬の様子は大きく異なる。
それでも地元の人の中に少しでも前に進もうとする動きが見られだし、程なく北陸の食、名湯や秘湯、日本海に沈む夕日などの絶景を求めて人が戻ることをSAYSFARMは願っている。
さて、改めてSAYSFARMの紹介である。先述した天然のいけすに加え、標高3000m級の立山連峰が身近にそびえ、水資源も豊富な自然資源に溢れる富山は、長く日本ワインの中心から遠い場所にあった。
「もともとワインを作る土地として認められていなかった場所です」というのはディレクターの飯田健児さん。大阪に生まれ育ち、父の生まれ故郷にIターンする形で参画した人物である。
その飯田さんは続けて「雨が多く日照量も少ない北陸はブドウをはじめとする果樹産地に適さないとされ、山梨や長野のようには、自治体にもブドウ作りのノウハウが蓄積されていませんでした」と言った。
いわばSAYSFARMはゼロからイチを作り出す状況からスタートしたワイナリー。そしてその中心には氷見で生まれ育った海の男がいた。
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