▶︎すべての写真を見る 昨今、サーフボードの選択の幅は広い。コストコで安価にボードが買え、一方で、物価高などの影響を受けて40万円を超えてしまったカリフォルニア発のブランドもある。
ショートボードやロングボード、その中間にあたる長さのミッドレングスなど、全長だけでもデザインは多様だ。
では、もし今年からサーフィンを始めたいと考える大人がいたとしたら、どのようなデザインを手にするのが最適解なのか?
サーフボードビルダーのタッピーこと吉川拓哉さんに、昨今のボード事情を伺った。
サーフボードも多様性の時代です
シェイプルームに多くストックされていた中から、サーフボードビルダーのタッピーさんこと吉川拓哉さんが撮影用に選んだのは8本。
冒頭の写真右端から3本は自身のレーベル、タッピーレコードのもので、スカイブルーの1本は1980年代に見られたボードをオマージュしてモダン化した「TBスラスター」モデル。
左隣は近年のトレンドをリードするミッドレングスのツインフィン。くすんだイエローがアダルトな雰囲気を醸すボードは大人がゆったり乗りたいシングルフィンの「コズミック・ソファ」モデルだ。
そして中央のロングボードはデウス・エクス・マキナの「ゴリアス」モデル。薄いパープルのものはプロサーファーの市東重明さんが主宰するブランド、レイジー・ボーイ・スキルで展開する「マッド・フィッシュ」モデル。
橙色のボードはタッピーレコードの最新モデルとしてテスト中の1本で、4本フィンに特徴が見られるツインザーという名称の目下最注目のデザインだ。
最後の2本はタッピーさんの私物。右が豪州のレジェンドサーファー、アンドリュー・キッドマン氏が手掛けたエッジボードと呼ばれるもの。
左は同国のマイク・マッキー氏によるボードで、スノーボードの形状にインスパイアを受けてサイドカーブを施したデザイン。フィンに近いアウトラインを見ると内側にえぐれているようになっていることがわかる。
このように並べられた8本は形もコンセプトも違う。さらにシェイプルームの中にはルックスが異なるボードが多数置かれてあった。
「今、サーフィンはかつてないほどに自由なんです」とタッピーさんは言う。サーファーたちが思い思いに波に乗れるだけのデザインが揃っているためだ。
「90年代頃はショートボード一択でしたから、当時はフィンが1本のシングルフィンで始めるのが良いとされました。
シングルフィンのボードは3本フィンよりも機動性が弱く、乗り手がしっかりと操作する必要があるためで、ボードを乗りこなす力が養われるとされたのです。
しかし2000年代に入るとロングボードが若い人たちに支持されるムーブメントが世界中で生まれ、安定感が高くスタンドアップしやすいことから始めるうえでの格好のツールとされました。
そしてここ10年ほどはミッドレングスが隆盛です。ショートボードより安定感があり、ロングボード以上に取り回しがしやすいことから、今始めるならミッドレングスを手にするのがいいでしょうね」。
スポンジのようなクッション性の高い素材を使ったソフトボードを1本目にすすめる向きもあるが、タッピーさんはそうはしないという。
「ソフトボードと従来のボードはまったく違うもの。それが理由です。ソフトボードのメリットは、大きな浮力が備わるために波に力がなくても滑り出してくれること。
しかし将来的に自分でボードを操り、波を乗りこなせるサーファーを目指すなら、ソフトボードに慣れることは上達の遠回りになる可能性があリます」。
もし今回撮影したようなボードで波の上を華麗に舞うサーファーを目指すなら。その場合は、初めから従来の素材を使用したものを選ぶことが近道なのだ。
そしてソフトボードは、真夏の小波コンディションなどで海を楽しむスペアとして、車にそっと忍ばせておくのがいい。
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