そんなこんなで玲子さんは新卒でピラミッドフィルム クアドラに就職する。
「入社1年目では『アイパチ!』をイベントに出展。同期のみんなとわいわいしながらイベント運営をしました」。
お互いの手がふれ合った際の通電をトリガーとして写真を撮影する相性診断装置。
「こうした自社コンテンツはそれ自体を販売したりレンタルに出すわけではなく、イベントなどで企画から実装まで全部うちでできますよというアピールするためのもの。ものづくりをしている人が周りにいるし、イベントにも関われるし、いい環境だと思っています」。
そんな玲子さんを推薦してくれたのは、同じチームで働く石川紘隆さん。
「師富さんはビビらないんですよ。年上、役職関係なく思ったことを言える。もちろん、空気を抜群に読んだ上でですが。席が近かったので新人の頃から知っていますが、先輩に対する話し方、タイミングなどの要領がいいなと思いながら見ていました。あと、大衆酒場が好きという趣味も合っています」。
「この方のおかげでお酒が強くなった」と笑う石川さん。
そして、ふたりが指を指しているのは猫。これは雪見障子ならぬ「猫見障子」という装置で、障子の向こうにぼんやりと現れる猫が人間に反応して動き出すというもの。たわむれたり、ながめたり、気まぐれにあしらったりと、じつに癒される装置だ。
さらに案内してもらう。
「こちらの上の段は『エモライト!』といって、心拍数によって色が変わるペンライトです。コンサートなどで持って踊ると楽しいですよ。下のフラスコはゲーム中のシーンを識別して、それに合った香りを噴射する装置です」。
普通に一般販売したら売れそう。
お次の「もし壁」は“相互壁ドン”することでお互いへの気持ちの高まりが計測できるBOX型体験装置。
筐体の中は狭いので実際に壁ドンできる。
その右の「きょう、この夢を抱いて眠る」は、画像といくつかの質問から今晩見るであろう夢をAI生成する体験装置。テレビ東京系列のニュース番組「ワールドビジネスサテライト」に取り上げられたほか、「2023アジアデジタルアート大賞展FUKUOKA」の一般カテゴリー/インタラクティブアート部門でも入賞した。
面白い賽銭箱もあった。
「2019年にお客様に送った年賀状ですね。QRコードが印刷されていて、それを読み取ると、文字通り“神様”となったお客様は弊社が投げるお賽銭をお受け取りいただけ、お賽銭の金額に応じて見積もりが割り引かれます」。
この発想は出てこないな……。
最後は「冷凍餃子フライパンチャレンジ」。X(旧Twitter)での「ギョーザが張り付く」というポストをきっかけに、食品メーカーが同様の問題が起こるフライパン約3500個を回収。
それをマイクロスコープでの表面分析、3Dスキャンによるデータ収集、調理による解析を実施したというプロジェクト。プロジェクトサイトの企画/制作、一部フライパンの3Dスキャンに携わった。
「PRアワードグランプリ2023」のブロンズと「第2回焼き餃子協会アワード」の大賞を受賞。
というわけで、ちょっと童心に帰れた取材でした。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
「デジタルで何かおもしろいことがしたい!」、これに尽きますね。
[取材協力]ピラミッドフィルム クアドラhttps://pfq.jp