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2024.03.07

ライフ

13歳で単身渡米。破天荒なニューヨーカーから気鋭アーティストに転身した男の原体験



13歳でニューヨーカー、そしてアーティストに転身。

近年アート業界で注目を集めるアーティスト・市川孝典さんはかなり異質な経歴を持つ人物だ。

そんな市川さんの作風は、温度や太さの違う線香で和紙に焦げ跡をつけ、1枚の絵を完成させる「Scorch Paintings (線香画)」。現在、彼の作品を展示した個展「DELUSIONAL murmur(#003)」がGALLERY COMMONで開催されている。

誰にも真似できない技法で圧巻の作品を生み出し続ける市川さんだが、その背景には彼自身の波乱万丈な人生があった。

芸術に触れた幼少期。13歳で突如NYへ



市川さんがアートに初めて触れたのは、幼少期の頃。

「僕の家には曾我蕭白やマティスの作品が飾ってあったので、物心ついた頃からアートには触れていました。茶道や華道とか、芸道の分野にも踏み入れていましたね」。

美術に強い興味を持つきっかけとなったのが、小学生の頃に出合ったリチャード・プリンスの作品だという。



「正直なことを言うと、初めて彼の作品を観たときは意味がわからなかった(笑)。でもどこかに惹かれるものがあったんです。

美術に詳しい人から、『彼は人の写真を上から撮って自分の写真と言い張る人だよ』と教えてもらい、当時の僕は『何だそれ、格好いい!』と強く惹かれました。同時に、自分にもやれそうな気がしたんですよね。

今振り返ると趣味のパンクロックを初めて聴いたときも同じことを感じたので、両者には共通点があったのかもしれません」。



市川さんは幼い頃を振り返りながら、「かなり厳しい家庭に育った」と語る。友人を作る余裕もないほど習い事をし、学校以外の時間は稽古事にすべての時間を注ぎ込んだ。

だが、元来好奇心の強い性格から、その関心はまったく別の方向に進んでいく。

「誰かに迷惑をかけようとか反抗心ではなくて、昔からいろんなことに関心があったんです。機械が好きで、好奇心のあまり8歳の頃に友だちのお兄さんの車を運転して、警察に捕まってしまったんです」。

好奇心が強すぎるあまり、問題児として実家から勘当されてしまった市川さん。各地の親戚宅を転々としたのち、最終的に祖父母の家に落ち着き、学生をしながら先輩の仕事を手伝っていた。しかし、13歳のときに転機が訪れる。

「祖父母が亡くなったことで、僕のなかで日本に留まる理由がなくなっちゃったんですよね。そうしたら無性に海外へ行ってみたいという気持ちが生まれてきました。当時は海外といえばニューヨークしか知らなかったんです(笑)。土嚢袋に働いて貯めたお金と鳶服、ありったけのお菓子を詰めてニューヨーク行きの飛行機に乗り込みました」。


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