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今、マジックボードはないのかもしれない

ボードデザインの多様性は“マジックボード”の概念にも変化を与えた。先述したショートボード全盛期においては、マジックボードと評価されるボードができたら、そのデータを記録してコピーを増やす傾向があった。

特に試合で勝つことを求められた選手にとって、狙いどおりに動いてくれるマジカルな1本は頼りになる存在だったのだ。

しかしサーファーの感性が多様化し、トップ選手が見せるアクション主体のライディングだけが是とはならなくなった今、求められるボードはフィンの数も板の形状もさまざまとなった。

「そこに個人的なブームという視点をプラスしたとき、かつてのように永続的に評価されるマジックボードは存在し得ないのではないか、という気にもなるんです」とタッピーさんは言う。

「音楽になぞらえるなら、今はヒップホップのある曲にハマっていても、いつしか異なるサウンドが聴きたくなることがありますよね。必ずしも、その楽曲の魅力が落ちたわけではないのに。それって、サーフボードも同じなんだと思うんです」。

サーフィンは「波に乗る」という非常にシンプルなスポーツだ。構成要素はサーファーとサーフボードと波だけしかない。

そして、その中でサーフボードと波には多様性が見られる。だから多くの異なるデザインに乗り、多くの異なる波に乗る。するとそれだけ多くのサーフィンの楽しさに触れることができる。

今年、海デビューを果たしたいなら。ぜひ車にボードを4〜5本積んで、波によって、気分によって乗り換えるスタイルを目指してほしい。それがタッピーさんからのメッセージ。現代的なサーフィンとの向き合い方なのである。
THE SEAWARD TRIPが一冊の本となって発売中!

1980円。イカロス出版

1980円。イカロス出版


2012年から続く本連載が一冊の本『海と暮らす〜SEAWARD TRIP』となった。これまでオーシャンズで紹介されてきた記事から20人のインタビューと20本のコラムを厳選して綴じたもので、「暮らしを豊かにする 金言」がたっぷり。

海との距離をギュッっと縮めてくれる内容は、まさに“海をいつも感じていたい”気分にぴったりなのだ。


PAK OK SUN(CUBE)=写真 小山内 隆=編集・文

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