暮らす人が、井波を誇らしく思えるように
井波に暮らす人や、地元の子どもたちも〈Bed and Craft〉に興味を持ってくれていると言います。活動を続けるなか、山川さんがとても嬉しかったというエピソードを話してくれました。
「〈Bed and Craft〉を始めて3年目くらいのときに、定年退職した地元の方が喫茶店をオープンしました。人口も減っている今、町の将来性を感じられなかったらわざわざ身銭を切ってお店をやろうなんて思う人はいませんよね。僕の活動や、国内外からこの町を訪れている人々の様子を見てそういう行動を起こしてくれる人が出てきたことも嬉しかったです」
子どもたちも山川さんたちの活動に注目しています。
「地元の中学校で、〈Bed and Craft〉の取り組みを劇にしてくれました。中学校の授業で、郷土の歴史を知るためにグループワークをする時間があります。大抵は地元の神社をリサーチしたり、街道の歴史を調べたりする生徒が多いと思います。でもある生徒が『〈Bed and Craft〉を調べたい』と言ってくれたそうです。20人以上の希望者の中から選抜された5名の生徒がインタビューに来てくれました。
生徒たちも最初は、単純にオシャレな宿だったから興味を持ったというのがきっかけだったのかもしれないけれど、インタビューでは『なぜ〈Bed and Craft〉をつくったのか』、『町や社会にどんなふうに貢献しているのか』など私たちの想いを深く聞いてくれました。それを劇にまとめて、文化祭で発表。その劇を見た親たちもこの宿の存在を知ってくれました。
この町で生まれ育って、伝統工芸としての井波彫刻の存在は知っていても生活する上では関わりがない。だから〈Bed and Craft〉を通して彫刻のことを知ったり、職人の暮らしを知ったり、興味を持ってくれる人が増えてきているのはとても嬉しいことです」
他にも、この町には可能性がある。そう思ってくれる住民が増えているという手応えを感じられていると山川さんは言います。
「『田舎には仕事がないから帰ってくるな』と子どもに言う親が多かったと思います。でも今、井波では東京に住んでいる子どもに親が『うちの近くに空いている場所があるから、帰ってきて何か始めたら』なんて話している。大人たちも、井波が面白くなっていると感じているんだと思います。
最近は町の人も宿に泊まってくれる機会が増えました。宿は一棟貸しでキッチンも付いているので、大勢で集まって料理をして、飲んで楽しんで寝て帰る「女子会」をする人や、お盆やお正月に子どもが帰省するからと借りてくれる人もいます。町の人にとってインフラのような存在になれているのかなと思います」
「宿は、いい職人さんたちを知ってほしいという思いで、建築家は黒子として職人さんの作品に合わせ空間を作っていきました」と山川さん
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