うつ病や長寿遺伝子の活性化にも期待
――え、うつ病ですか? 意外かもしれませんが、花粉症とうつ病はどちらも炎症が原因なんです。花粉症では鼻や目、のど、皮膚などに炎症が起こり、うつ病では脳に起こります。
簡単に説明すると、うつ病の原因は、脳の中にストレスによって、ダメージ関連分子パターン(DAMPs)という物質が作られ、炎症を起こすこと。炎症が続くと脳の免疫細胞が神経細胞のシナプスを破壊し、セロトニンなど精神を安定化するホルモンが減少してしまいます。
――そこで、体のあらゆる炎症を抑える酪酸菌の出番、というわけですね。 そうなんです。実は今、うつ病の臨床試験を開始しているところなんです。こうした試みがうまくいけば、将来、日本中のドラッグストアで、長沢オリゴを売ることができるようになりかもしれません。
――そのほか、新たな発見はありましたか? はい。今注目しているのは、長寿遺伝子の活性化です。私が行った実験では、大腸内の酪酸菌を増やしている人は、全員、体温が上がることがわかりました。しかも、ほとんどの人が0.5℃以上も上がりました。私自身も以前は36.0℃以下だった起床時体温が、酪酸菌を増やした後は約36.4℃になっています。
こうした体温の上昇と長寿遺伝子の活性化には関連があるといわれています。まだ研究段階ですが、大腸で酪酸菌が増えることで体温が上がり、視床下部にある長寿遺伝子が活性化されるのではないか、と考えています。
結果、動脈硬化の予防、脳機能の増強による記憶力、集中力のアップなどさまざまな恩恵を得ることができます。
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