今年1月、生分解性プラスチックに新たな発見が
ところで、昨今化粧品の容器などでよく見聞きする生分解性プラスチック。これは海洋環境改善に有効なのだろうか。
日本バイオプラスチック協会による生分解性プラのマーク。
「ペットボトルなど、ほとんどのプラスチックは海に流出すれば、数百年も漂い続けることになります。これまで、地中で微生物が分解してくれる生分解性プラスチックも、海洋生分解性は認められないとされてきました。しかし、今年1月に東京大学とJOGMECなどの共同研究で、深海において生分解性プラスチックは数ヶ月で微生物が分解してくれることが発見されたんです。これは極めて大きな朗報だと思います。
プラスチックの種類を示した図。いちばん環境に良いのは、右上のバイオマス由来の生分解性プラスチックだ。/Bio-plastics Europe資料に井植さん加筆
ただし、現在市場で流通しているプラスチックのうち、生分解性プラスチックはたったの0.02%しかありません。これまでも日本の企業から、海洋生分解性があるとされるマテリアルの開発もわずかながらに報告されています。しかし、社会で主流となるにはさらなるマテリアルの開発と実用化、そして普及が必要です」。
川に漂流するプラゴミ回収の様子/オランダの非営利環境工学団体 The Ocean Cleanupサイトより。
流出してしまったプラスチックゴミは、なんとか回収できないのだろうか。
「そのため焼石に水ですが、漂流するプラスチックを大きな網ですくうなど、アナログな方法しかないのが実情です。ドイツやニュージーランドでは、川から流れてくるプラスチックを海に流出させないように川で堰き止めるプロジェクトが行われていたりもします」。
日米欧のリサイクル率。ただし、日本のリサイクルで大半を占めるのは、サーマルリサイクル(熱回収)。廃棄物焼却時の排熱を回収し、エネルギーとして活用することだ。欧米各国では熱回収をリサイクルに含まないので、低めのリサイクル率となる。日本は熱回収以外のリサイクル、特にプラスチックの使用を減らすリデュースに取り組み続ける必要がある。/PETボトルリサイクル推進委員会
海洋保全のためには、多面的に取り組む必要があり、何かひとつに取り組めば大幅に改善するわけでもない。だからと言って、何も手を打たないことはできない。
「私も毎日の暮らしの中では、ブルーシーフードを優先的にいただき、ペットボトルの飲み物は買わずに、お水も浄水器からガラス瓶にボトリングします。さらに、地産地消で食材の輸送によるCO2排出を抑えるためにも、家庭菜園も積極的に楽しんでいます。自分で育てた野菜を使って献立を考えたり、毎年野菜を増やしたり、収穫量も毎年変わるので楽しみが多いですよ」。
日本は海洋保全へのスタートが遅れたからこそ、世界の良い事例に倣い、国を挙げての環境改善を実行したい。そのためにも個人個人が、自分のできることから一歩一歩取り組み続けていく。それが何よりも大切だ。