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難しいテーマに挑んだ、映画『一月の声に歓びを刻め』

前田さんの主演映画『一月の声に歓びを刻め』が先日公開を迎えた。

本作は、国内外の映画祭でも高い評価を受ける、三島有紀子監督の体験談をもとに作られた。三島監督が47年間封印していた「性暴力と心の傷」という難しいテーマにあえて挑み、心の中に生まれる罪の意識を、静かに深く見つめる映画だ。

2月9日よりテアトル新宿ほか全国公開。© bouquet garni films

2月9日よりテアトル新宿ほか全国公開。© bouquet garni films


数年前から三島監督と「いつか一緒に作ろう」と話していた前田さんは、監督が自主制作でこの物語を作ると聞き、主演のオファーを受けた。飛び込みたい気持ちはあったものの、「今の自分にそれができるか」という葛藤を抱えていたと振り返る。

「子供がまだ小さいので、あんまり重い作品を自分で演じられる覚悟がなかったんです。万全の準備ができなくて、『やっぱ無理かも』って心が折れちゃったらいちばん失礼じゃないですか」。

そんな前田さんの心情を察するかのように、三島監督はずっと待ち続けた。

「監督は私をずっと待っていてくれたので、時間をかけて考える機会があったのはありがたかったです。このように向き合える作品は滅多にありません。

監督が私に何かを託そうとしている感情が伝わりました。自分が向き合い続けてきた非常にパーソナルなことを私に託してくれていると」。

© bouquet garni films

© bouquet garni films


『一月の声に歓びを刻め』は、現代の人々に「生きることの大切さ」を伝えることを目的として制作された。この映画の中心人物であるれいこは、性暴力の被害者でありながら、不屈の精神で生き抜く強い女性だ。三島監督は、れいこの役をたくましさを持つ俳優によって演じられることを望んでいた。

「監督が私をたくましく思ったのは、普段から感情を表に出さない性格だからかもしれませんね。テレビに出演しているときでも、友達と一緒にいるときでも、家族と過ごしているときでも、常にこのままです(笑)。

それが逆に『すごいね!』と言われることがありますが、ただ嘘をつけない、不器用なだけなんですよね」。


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