支援の目的は「自走」できるようになること
彼は7年間、ゴールドマン・サックス証券で働いたのち、2015年アパレルブランド
CLOUDYを立ち上げる。主にアフリカのガーナを支援しているが、お金や物資を支援するだけでなく、彼らが「自走」できるように支援しているのだ。自走とは、外部支援に頼らず発展していけること。
小説の中の堂本も同じように話している。
堂本はアフリカと日本に拠点を持って活動しているそうだ。アフリカの工場では、現地の人たちに織り機やミシンの使い方を覚えてもらって、シャツやパンツを自分たちで作れるように導いている。
一方、日本では、作ったシャツやパンツを取り扱うお店を増やしたり、ネット通販で注文したお客さんにこの部屋から直接送るなどしていると話してくれた。
七海がしきりに感心している。
「私たちがアフリカに寄付するだけでは、長期的な解決にはならないんですね。それよりも、彼ら自身が生産できるようになれば、より持続的な未来につながっていきますよね」
『きみのお金は誰のため』123ページより
必要なものが自分たちで作れるようになれば、その社会は自走できる。インフラが整い、彼らの持つ技術が発達すれば、自分たちでいろんな問題を解決できるようになる。便利な物やサービスも、自分たちが利用するものは、自分たちで作れるようになる。これが、「生活が豊かになる」ということである。
銅冶氏らの支援で運営されている学校で行われた「騎馬戦」の様子(画像提供:銅冶勇人氏)
さて、ここからが本題だ。このアフリカの話には、今の日本が学ぶべきことが詰まっている。
日本に住む僕たちが「生活が豊かになる」と聞いて想像するのは、賃金がどれだけ上がったかという話。たしかに失われた30年の間に名目賃金はほとんど上がっていないが、生活は格段に便利になっている。30年前のようにわざわざレンタルビデオショップに行かなくても、iPhoneでNetflixを見ればいい。
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