当記事は「Forbes JAPAN」の提供記事です。元記事はこちら。 SF90 Stradale をベースとした限定生産の新たなスペシャル・シリーズ、SF90 XX Stradaleのステアリングを聖地フィオラノで握ることができた。V8エンジン+3基のモーターによって、最高出力は1030PSに達する。究極のロードカーを手なずけることができるのか。全身に緊張感が走る。
フェラーリはあまりも孤高な存在
フェラーリ史上最速のスポーツカー「Ferrari SF90XXStaradale」をドライブする最高の時間を、フェラーリの聖地フィオラノで過ごしてきた。その様子をレポートする前に、まずはフェラーリという自動車メーカーがいかに孤高な存在であるのか、その辺りから話を進めたいと思う。
20世紀初頭のイタリアではレースが盛んに行われ、アルファロメオとメルセデスの激闘はレース史に刻まれている。そのころ、フェラーリの創業者であるエンツォ・フェラーリはレーシングドライバーに憧れ、その願いがかなって1920年にはアルファロメオの正式なドライバーとして活躍していた。
第二次世界大戦後のエンツォ・フェラーリはレーシングマシンを開発し、自動車メーカーとしての「フェラーリ社」を設立したのである。
人々が自由に移動できるクルマを作るのが多くのメーカーの大義であったが、フェラーリはレーシングカーとして起業した珍しいケースだった。1950年にF1に参戦し、翌年に初優勝している。
レース資金を稼ぐために市販車を開発し、欧米のモータースポーツの富裕層たちに愛好され、フェラーリは高級スポーツカーとして認知されるようになった。このようにフェラーリは生まれたときからレースのDNAを持ち、大衆車から発展してきたポルシェとは対照的だった。フェラーリがいかに孤高であるか、興味を惹かれる。
「SF90XX Staradale」はどんなコンセプトで作られたのか
「SF90XX Staradale」のコンセプトは端的にいうと、紛れもなくレーシングカーの血統を受け継いで開発され、最近のF1に採用される電動化技術を惜しみなく投入している。
そう、このマシンはプラグイン・ハイブリッド車なので、EVとして走ることもできる環境派と思いきや、エンジンにガソリンを注入するととんでもないパフォーマンスを演じるモンスター。まさに現代のジキルとハイドのような2つの顔を持つフェラーリなのだ。
フィオラノでドライブした「SF90XX Staradale」はベースモデルの「SF90」からは+30PSパワーアップしているが、もっとも大きな進化は(SF90と比べて)車体後部に取り付けられた固定式大型リアウイングがアイコンとなるエアロダイナミクス(空力特性)なのである。この技術はまぎれもなくF1テクノロジーを継承している。
航空機とは逆に空気の力をつかって車体を路面に押し付け(航空機は空気の力で機体を浮上)、タイヤのグリップ力を大幅に高めている。その効果は絶大で、フィオラノ・サーキットのラップタイムを塗り替えている。つまり電動化とエアロダイナミクスが「SF90XX Staradale」のキーテクノロジーなのだ。
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