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2024.01.27

ライフ

食とカルチャーの仕掛け人・楠本修二郎「変わるためには、変わらないものをまずしっかり持つこと」



当記事は「THE WORDWAY」の提供記事です。元記事はこちら(第1回第2回第3回)。
昨日の自分を超える」をテーマに各界のトップランナーの言葉を音声とともに届けるメディア『THE WORDWAY』。音声、インタビュー全文を楽しみたい方はオリジナル版へ。
今回のアチーバーは、「WIRED CAFE」「Planet3rd」などを展開し、日本に新たなカフェ・シーンを作り上げたカフェ・カンパニー株式会社代表の楠本修二郎さんです。

楠本さんは、リクルートコスモス、大前研一事務所を経て、2001年にカフェ・カンパニーを設立。「コミュニティの創造」をテーマに、国内外約90店舗の企画・運営を行っています。

また、一次生産者をはじめ食産業に携わる方々をサポートし、日本の食産業の発展を支える基盤づくりと世界の課題解決への貢献を目指すZEROCO株式会社を2023年に始動。その他にも、東日本の食の復興を目的とした「東の食の会」や「おいしい未来研究所」 の代表理事を務めるなど、「食」と「カルチャー」の仕掛け人としてメッセージを発信し続けています。

挑戦を支えてきた経営哲学、変化をエネルギーに変えるメンタリティーとはーー。

言葉①過去の正解を尺度にしない。人との違いをリスペクトし、人と一緒だったら大いに喜ぶ



Q:楠本さんは「食」の仕掛け人として様々な事業を展開されてきました。カフェ・カンパニーも創業20年を超えた今、どのような活動に主眼を置いているのですか?

2年前に「おいしい経済」という本を書いたのですが、2050年ぐらいからバックキャストして、今の日本を見た時に、「今やらなければいけないのはこういうことではないか」というのが見えてきたんです。

日本には世界に誇る食文化があるけれど、一方で少子高齢化だったり、世界に目を転じても様々な環境問題や人口増加による需要と共有のアンバランスなどの課題がある。

そんな中で、経済的な価値だけにとどまらず、日本が「おいしくて、健康的で、サスティナブルな食」がある国であるということを生かして、世界の中で輝く国であり社会であるために、「今」何をやればいいのかということですね。 僕のテーマは全て食にまつわることですし、日本は世界の中でもいろんなおいしいものが一番食べられる国です。

だからこそ「食」だけではなくて、食×観光や、食×地方の活性化、ファッション、ライフスタイルとか、食を中心にして色んな事をかけ合わせていく。それをムーブメントのように広めていけたら、日本は少子高齢化を迎えても楽しい国になるんじゃないかなと思っています。

Q:具体的にどのようなアクションをされているのか、現在の食産業の状況も踏まえて教えていただけますか。

1つは、23年前にカフェ・カンパニーという会社を創業しました。これは、「Community Access For Everyone(食を通じたコミュニティの創造)」の略で、飲食店を通じて地域コミュニティを作っていくという仕事で、今、約90店舗を運営しています。

もう1つは、10数年前に東日本大震災になって、東北に入った時に、農業、漁業の方が大変な思いをされていることを知ったので、ここから復興ヒーローをどんどん作っていこうと「東の食の会」という一般社団法人を作ったんです。

少子高齢化の中においても、ヒーローが地方からどんどん出てくれば、日本はもっと元気になるんじゃないかと。そうした、いわゆる6次産業化に寄与するための事業ですね。



Q:楠本さんのキャリを振り返ると、大学卒業後は不動産関連の仕事や、地域活性事業にも携わっていたと聞きました。テーマとなった「食」との出会い、ルーツのようなものがあれば教えてください。

自分は真空管みたいな男で、中身は空っぽなんですよ(笑)。ただ、「すげぇ!」と思ったいろんな人たちのすごいところ、あるいは僕と違うところをリスペクトするというが大好きなので、「こんなおいしいものを作ってる人がいるんだったら、こことつなげたらもっと良くならないかな?」みたいな感じで、小さい頃から妄想していたんです。

だから、その対象は「食」だけじゃないんですよ。ただ、「食」って1日3回、必ず自分のところにチャンスが回ってくる。つまり非常に印象の深い機会があるわけで、いろんなことを妄想したり、バカ話したりした経験が多かったのが、たまたま「食」だったんだと思いますね。


Q:そうした「食」への思いが土台にあって、99年に一号店がオープンした「WIRED CAFE」が大きな話題を呼び、01年にはカフェ・カンパニーを創業されたわけです。飲食店、外食産業の可能性についてどのように感じていたのですか?

大学の時にイベントの企画をしたりしていたのですが、僕がお世話になった大先輩が作るお店が本当にすごかったんです。

世界でナンバーワンじゃなく、オンリーワンの店しか作らないみたいな方で、その店に世界中から一流の人たちが集まるコミュニティになっているのを目の当たりにしていました。そんな人々が集まる場を作ろうということがベースにあります。

「コミュニティ」は、人が集まる場を作るということで、人が集まることがその場所の価値になっていくわけです。そして、そこにおいしいものがあるというのがベースにあるので、「食」が中心というよりも、「食」が媒介になって風景を多様に作っていくのが楽しいのだと思っています。



Q:人々から求められる「コミュニティ」を作る上で大切にしていることはありますか?

僕は、単にご飯を食べるだけの店を作るのではなく、「食」を中心に、その時代の変化に合わせた「コミュニティの場」を作っていくことを大切にしています。

時代によって求められるコミュニティ像が変容していくということは、僕のビジネスや企画もその時代時代に合わせてどのように自己変容を遂げていくべきかを追求することだと思うんです。


Q:楠本さんのように、変化を受け入れながら前進するには何が必要でしょうか。

変わるためには、変わらないものを何かをまずしっかり持つことだと思います。僕にとって変わらないものというのは、言い方を変えると「先入観を持たない」ということです。人と違うこと、違いをリスペクトする。

あるいは自分の価値観や、過去の正解を尺度にしない。1回素直に聞き入れる。ミーハーに聞き入れる、みたいなところは、僕は変わらず持ち続けていると思います。


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