これまで自身が見てきたなかから、おすすめの革ジャンについて聞いた。ここでも小沢節が優しく炸裂する。
「ルイスレザーズは着やすいし、格好いいからおすすめです。めちゃくちゃ高額なんですけど、これから先、一生お付き合いができると思えば安いもの。だって、濃密な時間を過ごすことになる革ジャンは、親友みたいなものですから。
親友との関係って、つかず離れずと言いますか、途中で距離を置くときがありますよね。でも、ある時期がきたら、戻ってくるじゃないですか。安くて便利な友達といても、希薄な関係性しか築けませんよ。それは格好良くもない」。
最後にずばり、「ご自身にとって革ジャンとは」という質問をぶつけてみた。
「うーん……」と熟考した末に出てきたのが、「レモンが入っていないレモンティーかな」とぽつり。言葉の意味を尋ねると、「ないですよ」ときっぱり。
「つまり、そういうこと。”意味なんている?“ってこと。意味ありげだけど、意味なんかないんですよ。僕が革ジャンを着ることに意味なんてない。それ以上でも、それ以下でもない。強いていうなら、やっぱりそのときのノリかな」。
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取材を終え、撮影準備のために「ジョンソンズ」ジャケットを羽織り、紫煙をくゆらせながらスタンバっていると「あ、やっぱり変えよう」と、小沢さんは思い出したように口を開く。
「“レモンが入っていないレモンティー”はやめて、”娼婦が作ったスパゲティー”に変えてもいいかな。同じ意味がないことなら、こっちのほうが格好いいでしょ」。
不条理なアウターである革ジャンへの愛も、シメの言葉選びにもさしたる意味はない。ただ「格好いい」から。
小沢さんの言葉は、不思議と「それでいい」と思わせてくれるのだ。