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〈すごろくや〉代表・丸田康司さん

「新しい思考を授かれる。それこそがゲームの最大の魅力」

丸田康司さん
株式会社すごろくや代表取締役。『MOTHER2』『風来のシレン2』などテレビゲーム開発に携わった後、2006年に近代ボードゲーム・カードゲームの専門店〈すごろくや〉を設立。現在は、東京の吉祥寺と神保町の2店舗で展開中。海外製ボードゲームの国内向けローカライズやイベント運営、自社ゲームの開発、書籍の発行など多岐に渡る活動をしている。
すごろくや:https://sugorokuya.jp/
 

コンピュータゲームやボードゲーム、スポーツの試合など、ゲームすべてに備わっている本質とは何か。その問いに私はいつも「自らの思考と決断によって、うまくいったと喜ぶ結果が得られる制度の枠組み」のことだと答えています。だからゲームの魅力となれば、自らの「喜ぶ結果」のために「思考と決断を行うこと」に他なりません。「喜ぶ結果」の方ではないのです。

そして、大事なのはその「自らの思考と決断」の力は一人ひとり違うということ。一直線上のベクトルですらありません。だからこそ、自分の力量にあった、新たな思考のベクトルを提示してくれるゲームや対戦相手に出会った時に、「こんなに新しい考え方をさせてくれるなんて面白い!」と思える。これこそが最大の魅力です。

私がボードゲームに魅せられたのは、30年以上前。当時ボードゲームのプレイヤー人口はかなり少なかったのですが、今はメディアの拡散力によって日本でもようやく浸透し始めています。しかし、おもちゃ要素が強かったり、言葉の感性を使ったりと、見ていれば遊び方が解るくらい簡単で似たりよったりなゲームになりがち。

一方、複雑なボードゲームも苦なく楽しめるフリークたちは、より複雑で長時間かかるようなものを好みます。メーカーもその需要に応えようと、より複雑化したものを大量に供給してきた結果、二極化と供給過多が進みました。その反動としてこの何年かは、「大人がほどよく考えて楽しむのにちょうどいいゲーム」が尊ばれる傾向が増してきているように感じます。

そうした中、これからのゲームは、自分だけで楽しむよりも「他者に対してどう使うか」に重きを置く価値観が高まっていくでしょう。一般的にゲームはコンピュータゲームのことだけではなく、「誰かがやってくれるもの」「それを見て楽しむもの」「プレイする側の人は何か特別なスキルがある人」という価値観がメジャーになることも考えられます。

一方、ボードゲームは、そのような「見て楽しめる」成分はかなり少ない。人集めも含めていかに能動的に接していけるような環境をつくれるかが課題。それを踏まえて、これからも〈すごろくや〉の事業を進めていくつもりです。




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