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2023.12.04

ライフ

「Z世代へも体育会系スタイルを貫く」というマネージャーが見直すべき、若手の価値観と自身の現実



「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは……

本日の相談者:メーカー勤務・42歳
「営業職でマネジメントをしています。Z世代と言われる若手の教育を任されることが多いのですが、私は過去教育されてきた体育会系のスタイルで貫いています。

相手によって上司の言動がぶれるほうが良くないと私は思っていますが、同僚からはZ世代はメンタルが弱いから気をつけて、とも言われます。私はスタイルを変えたくないのですが、気をつけるべきことを教えてください」。 
アドバイスしてくれるのは……

 そわっち(曽和利光さん)
1971年生まれ。人材研究所代表取締役社長。リクルート、ライフネット生命保険、オープンハウスにて人事・採用部門の責任者を務めてきた、その道のプロフェッショナル。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(共著・星海社新書)ほか。

精神疾患の罹患数を見てみると

本当にZ世代はメンタルが弱いのか、まずはデータを見てみましょう。
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3年に一度実施されている厚生労働省の直近の「患者調査」(2020年)によれば、うつ病等の気分障害に罹患者は、年代別ではX世代にあたる40代と50代が約37万人と最多です。



一方、Z世代にあたる20代は約14万人で、未成年を除けば(20歳未満は2万人弱)最少です。この数字だけをみれば、Z世代のうつ病患者はむしろ少ない。

X世代とZ世代の人口比(約2倍)を考えても、Z世代のほうが多いとは言えないでしょう。もちろんX世代が20代だった30年前と本来は比較すべきかもしれませんが、今と精神疾患に関しての考え方が異なるので比較することは難しいです。

ただ、現在においては、中高年のほうが精神的な病気にかかっているということは事実です。


メンタルの弱さを隠さないだけではないか

つまり、ご相談の前提となっている「Z世代はメンタルが弱い」は、明白な事実とは言えません。それはおそらくX世代と比較して、自分のメンタルの弱さや悪化について、隠すことなく大っぴらに言ってしまうからではないでしょうか。

思い返せば、私が社会人になった30年前には、精神疾患に関しては偏見も多く、「精神科に通っている」=「ダメなやつ」というレッテルを貼られかねず、会社での処遇にも響くような状態でしたので、どんなに辛い状態になっていたとしても、言い出しにくかったわけです。

ところが現在で精神疾患は「誰でもかかる可能性があるもの」「ダメなわけでも弱いわけでもない」と思われるようになってきたので、若いZ世代は辛いときには辛いと言いやすくなりました。むしろ辛いと言えるのは強さかもしれません。
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早期に発見して対処できるからむしろありがたい

ただ、昔の記憶があるX世代には「すぐに弱音を吐く」というように無意識的に感じてしまうのではないでしょうか。しかし私は、彼らZ世代がすぐに弱音を吐くことは、良いことではないかと思います。

我々X世代は弱音を吐くことをダメ扱いされていたせいで、本当に辛いことがあっても、休んだり逃げたりすることができずに、結局つぶれてしまうことがよくありました。

たかが仕事で人生を狂わせる必要などありません。これ以上行ったらどうにかなってしまうと思うほど辛かったら、きちんと辛いと上司や周囲に告げて、自分を守ることは大切です。

会社も社員を潰したいと思っているわけではないですから、むしろ「アラートを上げてくれてよかった」とも思っています。
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実際、現在ではいろいろな会社で「密かにメンタルを病んでいる人がいないか」と、サーベイなどを使って早期発見しようとしているところが増えています。


「勝ち負け」にこだわらないから弱音も吐ける

Z世代の特徴のひとつに価値相対主義というものがあります。「みんな違ってみんないい」と、多様な価値観をそれぞれ認め合うような考え方です。

彼らは「こうでなくてはならない」という絶対的な価値観をあまり好みません。自分はこうだけれども、そういうことがあってもいい、と思っています。

価値相対主義を持っている人は競争を好みません。競争とは何らかの絶対的なモノサシを基準に人を比較するものだからです。

彼らに「あいつに負けてもいいのか!」とか「MVPを取りたくないのか!」などと言っても、「はい、別にそれはどっちでもいいです」となるのがオチです。

彼らは「自分のモノサシ」で自分を測りたいので、他人との「勝ち負け」は関心がないのです。それで、弱音も吐きやすいのではないかと、私は思います。
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