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しかし「パワハラ」にならないかどうかが問題



解雇と違い、退職勧奨には法律において特に前提条件はありません。業績の低迷や業務命令違反、不祥事などの理由は必要ないのです。

ですから、今回のように「専門領域が異なるため、新しいところで活躍したほうがよいのでは」ということで退職勧奨をすること自体は問題はありません。

しかし、一つ気をつけなくてはならないことがあります。それは、パワハラにならないかということです。

退職勧奨の過程で、従業員に不当な心理的圧力を加えたり、従業員の名誉感情を不当に害するような発言をすることは、不法行為であると判断されています(東京地方裁判所判決平成23年12月28日 日本アイ・ビー・エム事件)。

パワハラ的な退職勧奨は「退職強要」と言われ、これも裁判で敗訴する例が多くあります。


「長時間多数回」などは厳禁。相手のことを考えて丁重に

 
NGポイントは、まず「長時間多数回にわたる退職勧奨」です。

何を以て「長時間多回数」であるかはケース・バイ・ケースですが、一般的には1回の面談が2時間以上であったり、10回以上の回数であったりすれば、NG認定された判例があります。

他にも「退職させるための配置転換や仕事の取り上げ」や「退職届を出さなければ解雇するという脅し」などもNGです。

退職勧奨はあくまでも丁寧に進める必要があります。まず、日々の行動記録や公式な人事評価結果などの事実を集め相手が納得するような退職勧奨の理由を固めます。

そして個別に会社としてこういう理由で退職してほしい旨を伝え、回答期限を設けるなどしてじっくり考える時間も作ります。

また、退職後の不安を避けるために退職金の増額や、再就職支援会社の導入などの処遇も検討し伝えます。

そうして、本当に本人にとっても退職することでプラス面があると思えば、円満に退職届を提出してもらえることでしょう。
グラフィックファシリテーター®やまざきゆにこ=イラスト・監修
曽和利光さんとリクルート時代の同期。組織のモヤモヤを描き続けて、ありたい未来を絵筆で支援した数は400超。www.graphic-facilitation.jp


曽和利光=文

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