本件では会社からの一方的な解雇は厳しい
今回のご相談の場合、もともとの基幹事業が縮小しているということですが、新領域でシェアを拡大しているとのことですので、それで会社が傾くほどのことではないのは明白ですから「整理解雇」(リストラ)はできないでしょう。
また、部下が悪いことをしているわけでもないので、「懲戒解雇」も当然できません。また残る「普通解雇」は、傷病によって業務遂行が不可になったり、労働者の使用者への誹謗中傷等によって信頼関係が破壊されたりすれば可能ですが、これも当てはまりません。
残るは「普通解雇」事由のうちの「能力不足による解雇」ですが、これも相対的に能力不足低、だけではNGです。
事実として、その人の能力向上の努力や配置転換をしたかが問われますので、いくら専門家といえども、配置転換できる新領域がある以上は、これを理由に解雇することは厳しいと思われます。
退職を「勧める」ことはできるにはできる
さて、それでは最後に残るのは「合意解約」のみです。そして「合意解約」を実現するためには、会社から当人に対して「退職勧奨」をする必要があります。
これは「退職を命じる」わけではなく、文字通り「退職なされてはどうでしょうか」という話し合いをするということです。退職を「勧める」ことはできます。
しかし、従業員の側から見れば、言い方はどうあっても「退職勧奨」と「解雇通告」は極めて区別が曖昧であり、まかり間違えば、実質上の「解雇」だとみなされて裁判によって会社側に慰謝料などの支払いが命ぜられることも少なくありません。
とても慎重に行わなければならないものです。
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