では、ご登場いただきましょう。
「よろしくお願いいたします」。
こちらは、歯科衛生士の働き方をアシストするプロダクション「D.HIT」を2020年に立ち上げた杉野奈央さん。出身は伝統芸能の「石見神楽」が有名な島根県浜田市だ。
「あとは『しまね海洋館アクアス』も人気ですね。ソフトバンクのCMで口から輪っかを出していたシロイルカもいます」。
高校時代の3年間は、ずっとファーストフード店でアルバイトをしていた。努力の甲斐あって階級もどんどん上がり、そこではマネジメントの基礎を学んだそうだ。
高校卒業後は歯科衛生士として働いていた叔母の影響もあり、衛生士の専門学校に進学。
「勉強ももちろん大変ですが、休みの日も学校から紹介されたクリニックでアルバイトをしたり、付属の病院で実習をしたり、とても忙しい生活でした。でも、頑張った甲斐があって実技部門で学年の最優秀賞をいただきました」。
こうして、卒業後は神奈川県内で新規開業するクリニックに入職。
歯科衛生士時代の奈央さん。
そこで感じたのは求人倍率が約20倍ともいわれる歯科衛生士なのに、現場のスタッフの定着率が低く、また、女性ということで出産などのライフステージによって職場復帰が難しいという現状だった。
「最終的には先生と一緒に医院のマネジメントを考える仕事もやりながら、歯科衛生士として9年間働きました。でも、多くの課題を目の当たりにして、歯科衛生士を取り巻く状況を改善するための会社、D.HITを2020年に立ち上げたんです」。
業界の課題とは、子供を育てながら常勤で働くのが難しい、転院するとキャリアは一からのスタートになる、責任が大きい割には給料もそれほど高くない、などだという。
「まずは、歯科衛生士を対象にしたスクールを開いて、一般的なビジネススキルやマナーを教えました。予防の観点からも歯科衛生士が活躍できる世界のほうが未来は明るい、という思いもあったんです」。
そうこうするうちに、D.HITが抱える歯科衛生士のコミュニティはどんどん広がりを見せる。2021年には都内のスタジオで大学教授と40名の歯科衛生士でメディア用の撮影を行った。
奈央さんは歯科衛生士のキャスティングと撮影のディレクションを担当。
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