香りも味も、洗うことでレベルアップする!
ーーこの濁った水を目の当たりにすると、やはりコーヒー豆も洗った方がいいと思うのですが、なぜ一般的には洗わないのでしょう? いろいろな理由や考え方があると思います。ひとつはコーヒーの香りが抜ける、という意見があります。
ーー実際、香りは抜けないんですか? 少し難しい話になりますが、コーヒー豆(コーヒーノキの種)は微生物の力で発酵することによって、香りの前駆体が作られます。前駆体は熱が加わることで、初めて香り成分に昇華するんです。
ーー熱というのは、焙煎のことですよね。 そうです。例えばお肉を焼いたり、ホットケーキを焼いたりすることで、表面に焼き色が付きますよね。あれを「メイラード反応」というのですが、その反応が起きることで旨味成分が出たり、香りが出たりするんです。
コーヒーも同じで、焙煎時におおむね160℃の温度帯からメイラード反応が始まり、初めて香りが出てくるんです。それまでは、大豆程度の香りしかないんですよ。
竹林さんの焙煎所にはコーヒーの香ばしい香りが充満していた。
ーーつまり50℃のお湯で洗うだけでは、香りは抜けないと? はい。香りや旨味成分が抜けるというのはあり得ないと思っています。実際、この焙煎所もコーヒーのいい香りがしますよね?
私たちは、何よりも日常的に飲むコーヒーが安全であることが大切だと考えています。コーヒーを飲んでムカムカする、頭が痛くなる、胃がキリキリするっていう人がいますが、豆に残っている汚れや農薬といった不純物が大きく影響しているはずです。
ーー確かに、そういう理由でコーヒーを嫌う人はいますね。 たとえば下痢の原因をカフェインのせいにされることは多いですが、実はコーヒーのカフェインなんて玉露の3分の1しかないんです。
「コーヒーの味は好きだけど体に不調が出るから飲まない」という人には、洗った豆で淹れたコーヒーを一度飲んでみてほしいですね。雑味やエグみが一切なくてスッキリしているし、味も香りも最高ですよ。
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