当記事は「FUTURE IS NOW」の提供記事です。元記事はこちら。 街で暮らしていると、自然はどこか遠いものに感じられるかもしれません。けれども、実は日本の国土の約7割が山林。少し足を伸ばせば、自然と出合うことができるのです。一方で、そのほとんどが経済的に価値がないと思われたり、扱い方がわからなかったりなどの理由で手入れされずに放置されているという状況にあります。
宝の持ち腐れになってしまっている日本の山。今はただの山でもアイデア次第で”宝の山”にできる可能性があるかもしれません。そこで、山のエキスパートや各分野でユニークな活躍をするクリエイターの方々にお話を伺い、未来の山の活用方法を探りました。
山の価値は下がっている?
放ったらかしにさせないために必要なこと
「いきなり秋田の山林を相続したとしたら、困る人がほとんどでしょう」
そう話すのは、松本林業の13代目松本直樹さん。日本には約70万人の山林所有者がいますが、松本さんによるとその多くが東京のサラリーマンたち。相続でいきなり山を受け継ぎ、どう管理したら良いか分からない山林所有者が多いことが放置林の原因になっていると言います。放置林は土砂崩れなどの災害を引き起こす危険性もあり、日本の山が抱える大きな問題です。
こうした現状を解決するために松本さんが開発したのが、〈YAMAMORI〉。スマートフォンアプリ上で山林情報が一覧できるようになっており、山を持っている人と林業従事者が簡単につながることができるサービスです。
「所有者が山のことを何も知らないとしても、日本全国のどこか、例えば秋田の山奥に住んでいる林業従事者は山のことをよく知っているはずです。だから、そういう人たちをマッチングすれば、山の管理の問題は解決できる。そう考えて作ったのが〈YAMAMORI〉です」
〈YAMAMORI〉は山の新しい価値を生み出すことにも注力しています。放置林の問題に加えて山が抱える問題の一つが、木材一本の価格が低下していること。今では、70年かけて木を育てても一本数千円にしかなりなりません。そのために、ますます山は手間をかける価値のないものとして放っておかれるという悪循環が起きています。
「でも、これからの山の価値は木一本の値段だけじゃないはずです」
山の価値を上げ、山を守って行くために松本さんが注目したのは、近年のキャンプブーム。山林の価値は、土地の広さや植えられている樹木などで決められることが一般的で、現状では、小川がある、高速のインターが近い、見晴らしがいいなどのキャンプをするのに適した土地であるという要素は山の価値に全く反映されません。しかし、アウトドアアクティビティを求めて山を買いたいと思う人にとって、こうした要素こそ重視するもののはず。そこで〈YAMAMORI〉では、そうした情報もデータベース化しユーザーが見られるようになっています。
「山を相続して困っている方からの問い合わせは全国から届きます。それと同時に、山に興味を持っている人というのは一定数いるはずです。そういう人たちが山を面白がって遊んでくれれば、崖崩れを起こすような放置林は無くなっていくんじゃないでしょうか」
松本直樹
奈良県出身。代々続く松本林業の13代目。立命館大学大学院理工学部情報処理学科を卒業後、ITコンサルタントとしてシステム開発に従事。2012年からはIT企業の経営者に就任。2017年から家業を継ぎ、ITを活用した山林管理サービスを提供することで、山を守ることを目指す。
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