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賛否が分かれるエクステリアデザイン

あるいは、そのエクステリアデザインも、ふたつの世界をつなぐものだと言っていいかもしれない。

目をひくのは、まずフロントマスク。ラジエーターグリルの周囲はブラックアウトされ、デイライトにW210型以来の4灯式ライトのモチーフを入れたヘッドライトユニットに連結している。これはBEVであるEQシリーズのデザイン要素を持ち込んだものだ。

そしてリアビューではテールランプユニット内に埋め込まれたスリーポインテッドスターを象ったLEDライトが賛否を分けている。個人的にも実物は思ったよりは……と思いつつも、もろ手を上げて賛成とは言えないが、ここ数年のメルセデス・ベンツがこのスターマークをラジエーターグリルはじめいろいろな部分に、モノグラムのようにあしらっていることを考えれば、この大フィーチャーぶりも納得ではある。

テールランプユニット内のLEDライトはスリーポインテッドスターの形(写真:メルセデス・ベンツ)

テールランプユニット内のLEDライトはスリーポインテッドスターの形(写真:メルセデス・ベンツ)


面白いコントラストとなっているのが、フォルムはFRセダンとしてまさに正統派の仕立てとされていることだ。フロントオーバーハングは短く、ボンネットは長くて、キャビンは後方に寄せられている。テールはやや垂れ下がり、全体にエレガントな印象を漂わせている。

先鋭的なキャビンフォワードのEQEとは真逆を行くオーセンティックさは、敢えて狙ったものだろう。今はまだ内燃エンジンを積むセダンを求める人は、こういうものを求めているはず。とは言え、単に懐古趣味とはしないで、ディテールに新鮮味をプラスすることで、まさに時代の橋渡しをする。そんなデザインと言えそうだ。

こうして見て、そして触れるだけでも想像以上の気合の入り方に溜息が出た新型Eクラスは、乗ってもやはりスゴかった。あらゆる性能が、誰でもすぐに実感できるくらい格段に向上していたのである。

ボディの剛性感、堅牢感、静粛性ともきわめて高い

プラットフォームの刷新もあってボディの剛性感、堅牢感は半端なく、静粛性もきわめて高い。パワートレインはMHEVでもPHEVでも4気筒エンジンとの組み合わせが主体となるが、エンジンはまるで自分から遠く離れたところにカプセル化されて積まれているかのようで、騒音や振動をまるで意識させることがない。

新開発のAIRMATICエアサスペンションと、ADS+と呼ばれる減衰力連続可変式ダンピングシステムの組み合わせは、当たりが実に柔らかく、あらゆる入力をするりといなしてしまう極上のライドコンフォートをもたらす。それでいて身のこなしに軽快さすら感じられたのは、後輪を最大4.5°まで操舵するリアアクスルステアリングのおかげだろう。

試乗を前に、現行モデルを踏まえて考えていたのは、「なんで、これほど良くできたクルマを、改良ではなく全面刷新しなければならないんだろう」ということだった。そのぐらい先代モデルは完成度が高かった……はずなのだが、それなのに、いやそれだからこそ、試乗しての驚きは大きかった。その跳躍ぶりは、これまで体験したことがないほどのものだったのである。

あるいは“Bridge”という言葉には、妥協とか中途半端といった言葉を想起させる部分もあるように思う。

実際、前述のとおりおそらく内燃エンジンを積むモデルをこの代で終了し、そしてクルマとして一層デジタライゼーションを推進していくつもりのメルセデス・ベンツにとって、新型Eクラスは位置づけとして過渡期的な部分を否定はできないはずだ。

しかしながら新型Eクラスは、どこにもそうした妥協、中途半端と思わせる要素が見当たらなかった。むしろあらゆる部分でクルマはまだこんなにも進化できるのかと圧倒してきたのである。

11代にもわたって磨き上げてきた境地

実際のところ電動化もデジタル化も、ブランドを問わず抱えている課題であり、またクルマの将来の向かうべき姿であることは間違いない。その行き着く先がある程度見えてくるまでは、リソースをセーブするため現行のハードウェアをできるだけ延命させるという手だってないわけではなく、実際にそうしているブランドもある。

しかしEクラスはそうはならなかった。現時点で到達しうる最も高い次元にまで、しっかりユーザーを導く。そうすることこそが、ブランドとしてまさに次の時代への橋渡しになると、彼らは考えている。

それが自動車なるものを発明した会社の、そして11代にもわたって磨き上げられてきたクルマのプライドであり、これまで培ってきたユーザーとの交わりが自ずと導いた境地なのだろう。この驚愕の新型メルセデス・ベンツEクラス、日本にはおそらく2024年初頭の導入となりそうだ。




島下泰久=文
記事提供=東洋経済

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