OCEANS

SHARE

「会長」だったのに腰が低い人柄の理由

大﨑さんと1時間あまり話していて驚かされたのは、その立場に反するような腰の低さ。ただ、「窓際の時期が長かったこと」「役職や肩書に執着しなかったこと」「だから自分らしく働けてきたこと」「たまたま社長や会長になれたと思っていること」という経緯や考え方を踏まえると、その姿に納得できるところもあります。さらに、自分の歩んできた道を肯定したりすすめたりしないところからも、それを感じさせられました。

「僕は吉本に入って45年ですけど、ずっと同じ会社の人生もいいし、『違うな』と思ったら次の会社を探すのもいいし。昔は『二兎を追う者は一兎をも得ず』と言いましたが、今は『一兎も二兎も三兎も、白い兎も黒い兎もいろいろ追ったらええんちゃうか』という時代じゃないですか。だってまた感染症や災害があるかもしれないし、戦争や紛争もあって、外部環境がこんなに変化して不安いっぱいの中、自分の心に問うて選ぶこと自体が難しいですよね」(大﨑さん)

『居場所。』(サンマーク出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

『居場所。』(サンマーク出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします


あらためて大﨑さんに「『居場所。』という本をどんな人に読んでほしいか」と尋ねたら、考えさせられる言葉が返ってきました。

「ドイツに行ったとき大きな書店に寄って。ドイツ語の本だからどれ見てもわからないんですけど、絵本のコーナーに近づいたら『対象年齢3歳から73歳』って書いてあって面白いと思ったんですよね。みんな居場所がなかったり、さまよったりとかしている瞬間とかあるわけですから、願わくば3歳から103歳ぐらいまでの人々に読んでほしいと思っています」(大﨑さん)

この言葉を深読みするなら、「絵本とは本来、対象年齢がそれくらい広いもので、“子ども向け”というレッテルを貼らなくていい」「『居場所。』という本も同じくらい対象年齢は広く、誰もが自分事として読めるもの」。さらに言えば「書店の実用書コーナーに置いてもいいし、絵本コーナーに置いてもいいし、あるいはコンビニに置いてもいい本」なのかもしれません。

インタビュー後編では、ダウンタウンの居場所を作ったときのエピソードや、明石家さんまさんから得た教訓などをつづっていきます。



木村隆志=文
東洋経済オンライン=記事提供

SHARE

次の記事を読み込んでいます。