「タンやハラミだけのために牛1頭の命を奪う」は間違い
食肉業者の提案で「タン塩」というメニューが誕生してから約半世紀がすぎ、「売れるタンやハラミは不足する一方、売れないロースは余る」という問題を抱える現在の和牛業界。
ひるがえって焼肉業界に目を向けると、「『とりあえず塩ロース』なる仕掛けをはじめたら、ファーストオーダーからロースの注文が増えた」「タンではなく、サーロインからスタート!」などとインスタグラムに投稿する店が少しずつ出はじめています。
和牛の魅力を消費者に直接伝えることのできる焼肉店は、和牛業界の未来のためになにができるのか。京松蘭の代表である福本大祐に聞きました。
「人気の部位だけ仕入れてアラカルトで商売することも可能ですが、タンやハラミだけのために牛1頭の命を奪うというのはまちがっています。
焼肉屋は自分たちの利益だけでなく、卸業者や生産者まで考えた商売をしなければなりません。業界がロースの販売に苦戦しているというのなら、ロースを使ってこそプロの焼肉屋。
京松蘭 南森町の外観
サシの入り方や食感、肉そのものの旨みなど、部位ごとにさまざまな味わいがあるのが和牛の魅力であり、またそれぞれのちがいを楽しめるのが和牛の焼肉の醍醐味です。
和牛は日本が世界に誇れる産業です。100年後も和牛文化をのこす。それも、もっと成長したかたちで和牛文化をのこしていく。
そのためにも、一頭バランスよく消費することとお客さんの満足を両立させることがわれわれ焼肉屋の最重要課題です」