海ごみ素材で作る未来志向のUMI
アートフィアー 土生田 昇さん●1964年、兵庫県生まれ。 大学卒業後、生まれ故郷の兵庫県豊岡市にある 鞄製造メーカーの由利に就職。 多くのプロジェクトを経験したのち アートフィアーの代表取締役社長に就任。 現在はUMIの販売を手掛けている。 今春発表した2024年モデルは6色を用意。 豊富なカラーも魅力となっている。
さて、年々激しさを増すラン活だが、SDGs全盛という世の流れを反映したモデルも登場した。それがここに紹介するUMIだ。
UMIは日本海を望む兵庫県豊岡市にオフィスを構える鞄メーカーの由利が2021年に発表。関連会社のアートフィアーが販売を始めた。
最も大きな特徴は廃棄された魚網の再生ナイロン素材を使用したことだ。
誕生背景には、山陰海岸国立公園内にある美しい竹野浜海岸など豊岡の海を身近に生まれ育った経営陣たちの感性や、鞄にもサステナブルな要素を取り入れるべき時代だと捉えた経営的センスがある。
「1971年の創業以来、由利は国内外のアパレル企業からOEMを受注してきた日本の最大手メーカーです。海外のラグジュアリーブランドからの依頼も多く受けるなど、鞄の製造に関する経験を積み重ねてきました。
代表の由利昇三郎は日本に4つある鞄団体のひとつ、兵庫県鞄工業組合の理事長を2020年から2年務めたのですが、その際に廃棄魚網で生地が作れるという話を豊岡市の職員から聞きました。
それが海ごみ由来のアップサイクル鞄を現実化させる始まりでした」。
そう話すアートフィアー代表の土生田昇さんによると、市の職員の話は、海洋ごみ問題に取り組む日本財団が設立した一般社団法人アライアンス・フォー・ザ・ブルーを中心に動くプロジェクト。
同組織が協業する北海道の水産会社が道東エリアの海に捨てられた魚網を回収し、今度はそれを愛知県にあるほかの協業企業に送り、ペレットにし、糸を作り、生地にしていくものだった。
生地を作る工程が見えたことで、現実化へのハードルは一気に下がり、まずはビジネスバッグの素材に活用することを考えた。
「豊岡は鞄の産地です。デニムの岡山、メガネの鯖江、タオルの今治と同様、鞄といえば豊岡の名が挙がるほどで、日本製の鞄のおよそ7割をこの地で生産しています。
ただ、豊岡全体を見ても、ランドセルはこれまで多く手掛けてはきませんでした。それは由利も同様で、同社の主要製品はビジネス用や、日常使いのカジュアルバッグ。
学校関係ではスクールバッグなどのサブバッグの生産経験はあったものの、ランドセルの経験には乏しいのが実情でした」。
それでも足を踏み出そうと決めた理由には、「ランドセルが重すぎる」というニュース報道があった。
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