イチョウの一枚板のまな板は、天然素材のため一点ずつ木目や色みが異なる。刻印された鹿を目印にすることで、裏表の使い分けが可能。大●φ約33cm 8250円、小●φ約28.5~29cm 7260円/ともにくるみの木 0742-20-1480
「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは……▶︎すべての写真を見る 先日、奈良に帰省した際に見つけたまな板が思いがけず名品でした。
まな板について真剣に考えたことはあまりなかったのですが、ちょうどいくつか処分して、小さめのものが欲しいと思っていた矢先、「くるみの木」というカフェに併設しているライフスタイルショップで見つけました。
デパートのキッチン用品売り場とかに行くと、いろいろな種類のまな板が売っていますよね? そうなるとつい見慣れた長方形のまな板を選んでしまうと思うのですが、「くるみの木」には丸いまな板しか売っていなかったんです。
どうしようかと迷いつつも、潔くこれしか置いていないということは、きっとこれがいいという自信の表れなんだろうなと思い半信半疑で買って使ってみました。
すると、丸いと面積のすべてが有効に使えることを発見。さらに素材として使われているイチョウの木がいい香りで、水はけもいいし、安定感のある厚みとちょうどいい軽さも使い勝手がいい。
さらに、シンプルを極めたまな板の上にワンポイントで刻印されている鹿によって、デザインとして完成されていました。奈良らしい鹿モチーフは意外とデザイン的に難しいので、これだけかっこよく仕上がっているのは初めて見たかも。
表面は一点ずつ木目の模様が違うのですが、僕が家で使っているのは木目が山の稜線のような曲線を描いて、まるで山の上に鹿がいるように見えるのが気に入っています。
「くるみの木」のオーナーの方は食をはじめとするライフスタイルのオーソリティ。ショップに置かれている商品は、さまざまな経験を活かして厳選されたり、考案されたりしたんだということが伝わってきます。
ミニマルなデザインというのは、ユーティリティを突き詰めてとことんシンプルにしたあと、少しのウィットをプラスして完成するんですね。
藤井隆行●東京を代表するブランド「ノンネイティブ」のデザイナーで、ファッションからライフスタイルまで一貫したこだわりを持つ。「趣味のランニングの延長で、自転車かバイクの購入を検討中。走る楽しさに開眼していますが、やはり形から入るタチなので、いろんなメーカーを物色しています」。