連載「40代、なお食べ盛り」とは…… AIが作った画像かと思うほどの美しい霜降りのサシ、舌の上でとろけるようなやわらかな肉質……。
こんな理想的なA5ランクの和牛を食べ放題で楽しむことができるのが、東京・丸の内にある「すき焼き十二天」だ。
丸の内らしく、接待で使われることも多いという同店は、しっとりと落ち着いた雰囲気で、「ウマいものを食べさせてくれそうだ」という期待が高まる。
今回オーダーしたのは、すき焼き食べ放題コース(2時間制・1万5730円)。赤身から霜降りまで、厳選したA5ランク牛が食べ放題だ。
もともとコロナ禍の生産者支援のために始まったという、採算度外視のコースだけに1日5組限定。お値段はそれなりだが、通常のすき焼きだと、赤身肉コースで1万2100円するのだから、圧倒的にお得なことがお分かりいただけるだろう。
さて、実はA5にもさまざまな種類があるのを知っているだろうか?
ランク付けにはいくつかの指標があるのだが、そのひとつにサシの入り具合(BMS値)がある。BMSは1〜12までの数値があり、A5ランクになるには8以上が必要となるのだが、十二天で取り扱うのは、最高の10〜12までの牛肉のみ。つまり、A5ランクの中でも、完璧なサシの肉が食べられるのだ。
食べ放題の前に、まずは先付けの「自家製熟成生ハムと特選果実」から。
ただの先付けとあなどるなかれ。生ハムは1ヶ月かけて脱水し、粗塩とウォッカで1カ月塩漬けに。さらに1カ月乾燥させて深みを増した、手間暇かかった一品だ。
もちろん生ハムの原料にもこだわっていて、この日は香川県産のオリーブ牛のリブロースを使用しているという。まろやかな塩味と凝縮された肉の旨味。これだけでいくらでも酒が進む旨さだ。
食べ放題のなかには、メインの前の前菜やサラダなどで腹が膨れてしまった……というコースも多いが、こちらはそんな心配は無用。通常コースだとこのあと刺身や進肴が出されるのだが、食べ放題では、これらはカット。思う存分肉を楽しんでもらえるようにと、先付けも通常のコースよりも小さめになっている。
さて、いよいよ肉の登場だ!
まずは最初にやってくるこちらの皿を見てほしい!
「これでもか!」と美しい肉が並べられた大皿が席に運ばれてきたときのインパクトといったら、半端じゃない。
こちらの皿に並ぶのは、手前から佐賀牛のサーロイン、能登牛の肩ロース、鹿児島県産の北薩摩牛の赤身。全国から選別した肉の中から、さらにすき焼きに適した肉を部位ごとにセレクトしてくれているのだ。
さて、いよいよすき焼きがスタート。
ところですき焼きには関東風と関西風があるのをご存知だろうか。
割下でぐつぐつと煮込むのが関東風、鍋で肉や野菜を焼き付け、割下は使わず、醤油や砂糖で味付けするのが関西風だ。
そして、この食べ放題ではその両方が楽しめる。
というのも最初の肉は関西風にならい、店員の方がゆっくりと焼き付け、味付けをし(ただし味付けは割下)、個々の皿に取り分けてくれる。
具材をどんどん投入するワイルドな自宅でのすき焼きも悪くはないが、やはり肉のスペシャリストが作ってくれたすき焼きは、火入れが完璧で絶品。
とはいえ丁寧に作ってもらうと時間がかかるもの。
「さては、ゆっくり作って、食べ放題の制限時間を稼ごうと思っているな……」と疑いそうになるが、そんなせこい考えはこの店にはなかった。
なんと最初に焼いた肉を小皿によそってくれた後の、店員さんの「お召し上がりください」のひと声が、食べ放題のスタートの合図となっているのだ。つまり、乾杯のビールや先付けの時間は制限時間に含まれていない。
さあ、ここからは自分たちで肉を投入しながらすき焼きを楽しもう。
サーロインはサシが多く、舌の上でとろける旨さ。肩ロースは同じように美しいサシが入っているが、こちらはプルプルッとした食感。そして牛の旨みをしっかりと感じられる赤身……。
どれも上質な牛肉だけあって、脂がのっていながらも、くどくないから、どんどん食べ進むことができる。産地や部位の違いを食べ比べられるのも、こちらの食べ放題の面白さだ。
あっという間に最初の200g(1人前)をペロリと平らげ、追加の肉をオーダー。
追加の肉は、満腹具合によって、細かく量の相談できるのもポイントだ。例えば「最初の皿の半分ぐらいで」とか「赤身だけ3枚」とか、細かいオーダーに対応してくれる。もちろん溶き卵も好きなだけもらうことができる。
牛肉につい目が奪われてしまうが、京都から取り寄せるものもあるという野菜のおいしさも格別。もちろんこちらも食べ放題だ。
さて、肉を満喫したところで、ご飯と赤だしを持ってきてもらおう。
腹いっぱいと思っていたのに、米を食ったら不思議と肉が食べたくなるもの。そこで追加で肉をオーダー。米と赤だしも食べ放題なので、胃袋に自信のある人は、米とA5肉との無限ループに挑戦するのもおすすめだ。
うまい肉と米をたらふく食べる。これ以上の幸福があるだろうか。
この幸福を心ゆくまで楽しんでほしい。