じつはトヨタがアメリカ向けにはじめて輸出した乗用車でもある「クラウン」。アメリカでは1958年から1972年まで販売されたが、それ以降は中断されていた。このたび、最新モデルが再上陸する運びとなったが、それまでの間に販売されていた5世代目から15世代目までのモデルは未知の存在。1987年デビューのS130型や教習車でおなじみのクラウン・コンフォートなどが参加していた(写真:平野 陽)
だが、先ほど述べたもう1つの問題である、住んでいる州で登録ができるかどうかは、輸入できるかどうかとは別問題。
アメリカには日本のような車検制度はなく、登録上もハンドル位置は問われないのだが、ただひとつ、州ごとに定められた排ガス試験はクリアしなければならない。
とくにJCCSの開催地でもあるカリフォルニア州は排ガス規制がきびしく、EPAが定める基準よりもきびしい基準が設けられている。
アメリカでも同型の左ハンドルモデルが販売されていたにもかかわらず、人気車の場合はあえて右ハンドル車を輸入するマニアも存在。ホンダの初代「NSX」はアメリカではアキュラブランドで展開されていたので、そちらを買うという選択肢もあったはずだが、オーナーとしてはフロントのバッジがアキュラの「A」ではなくホンダの「H」マークであることが誇りなのだろう(写真:平野 陽)
結論はケース・バイ・ケースと書いたのもそれが理由で、公道を走ることができるかどうかは、その個体が排ガス試験をクリアできるかどうかにかかっているのだ。
軽自動車に関しては、州によって比較的簡単にパスできるようだが、スポーツカーはハードルが高く、エンジンをオーバーホールするなど、それなりに手間と費用をかける必要があるようだ。
コレクションや私有地のみでの走行という割り切りも
アメリカでも高い人気を誇る歴代のトヨタ「ランドクルーザー」だが、じつはタフユース向けの70系は販売されていなかった。こちらもそんなアメリカ人にとっては珍しい右ハンのランクル70。オーストラリアや南アフリカなど、日本以外の右ハンドル市場にも多く流通しているので、必ずしも日本から輸入した車両とは限らない(写真:平野 陽)
ただ、そもそも趣味性の高いモデルに関しては、あくまでコレクションと捉えているオーナーが多いのも事実。そういった人たちは、JCCSのようなイベントに参加するとき、またサーキットを走るときだけトレーラーで牽引すればいいので、登録する必要もないと割り切っているようだ。
また、軽トラなどは牧場経営者が広大な敷地内の移動に使ったり、猟銃を携えて狩猟を楽しむのに使ったりと、あまり日本人の発想にはない用途もある。それもまた私有地を移動するだけなので登録する必要もない。
そのように、日常的に乗れなかったとしてもほしくなる軽自動車や右ハンドル車。アメリカの旧車マニアにウケているのは、「それがそこにしかないから」と蒐集欲を激しく刺激するからにほかならない。
S13型の日産「シルビア」はアメリカでも「240SX」という車名で販売されていた。だが、両車はフェイスデザインとエンジンに違いがあり、240SXはリトラクタブルヘッドライトを採用。顔面だけコンバートすることも技術的に可能ではあるが、こちらのオーナーはどうしても日本仕様のシルビアがほしかった模様だ(写真:平野 陽)
2003年に8世代目モデルが正規輸入されるまでは、アメリカで販売されることのなかった三菱「ランサーエボリューション(通称ランエボ)」。熱狂的マニアたちがこうして右ハンドル車を輸入して走りを楽しんでいる。右が2世代目のランエボII、左が4世代目のランエボIV(写真:平野 陽)
ある意味、アメリカ人にとっての憧れの右ハンドル車を象徴する存在とも言えるトヨタの「センチュリー」。純和風に設えられた高級感が他では得られない満足感を与えてくれる(写真:平野 陽)
セド・グロの愛称でも親しまれた日産の「セドリック」と「グロリア」。こちらは6世代目のY30型セドリックワゴン。2.8Lの直6ディーゼルを搭載したモデルで、アリゾナ州のナンバーが付いていた(写真:平野 陽)
トヨタの「ハイエース」や「グランビア」、日産「ホーミー」といった箱型バンも一部の愛好家からの支持を集めている。ハイエースはニュージャージー州、グランビアはカリフォルニア州のナンバーを付け、ファミリーカーとしてバリバリ走っている雰囲気だった(写真:平野 陽)