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肉のおいしさは“3カ月”の差で決まる!?

©︎sutlafk/iStock

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――なるほど。それにしても松阪牛になるのは大変なんですね。


そうなんです。ちなみに30カ月以上の生育期間が基本ですが、松阪牛の本当のおいしさは33カ月以上の肉だと思ってください。

――たった3カ月しか変わりませんが……。

人間に例えるとわかりやすいのですが、歳をとると代謝が落ちて太りやすくなりますよね。それが牛の場合は30カ月頃からになるんです。そこで30カ月を過ぎたら、出荷までの3カ月間で、牛に脂肪をつけていきます。

実は30カ月未満の松阪牛を食べたこともあるのですが、おいしいけれどサシの入り方や肉の柔らかさは、やっぱり30カ月以上には敵わない。

――たったの3カ月と思ってしまいますが、そこで差がつくんですね。

そうですね。こちらも人と一緒で、3カ月しっかりとジムに通えば、体は変わりますよね。短い期間でも脂肪を増やすことは可能なんです。

ちなみに、兵庫県産の子牛を導入し、松阪牛生産区域で900日以上肥育された松阪牛は「特産松阪牛」と呼ばれ、さらにおいしさが変わります。

料理は、すき焼きやしゃぶしゃぶがオススメ

――ちなみに松阪牛って何がおいしいんですか?

ひとつは香りです。松阪牛は甘くてコクのある上品な風味と言われています。この香りは80℃の薄い食塩水で2分間加熱するともっとも強く感じられることがわかっています。

だから松阪牛はすき焼きかしゃぶしゃぶがおすすめです。加熱しすぎても松阪牛なら硬くなることはありませんが、高い温度だと松阪牛の風味が弱まってしまうので、ぜひさっと火を通す程度で食べて欲しいですね。

ーーなるほど! よく松阪牛のすき焼きって見るけれど、そういう理由もあったんですね。

そうですね。そしてもう1つのカギが脂です。食べたときに舌でとろけるようなまろやかさで、それでいてしつこくないのが松阪牛の特徴です。

これはなぜかというと松阪牛には、融点の低い不飽和脂肪酸が多く含まれているからなんです。ちなみに不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを抑えたり、血液をサラサラにする効果があると言われています。

――じゃあサシが多くても、ヘルシーってことか! 罪悪感なく松阪牛を楽しみたいと思います!

 ◇

名前は聞いていても、意外と知らないことが多かった松阪牛。次に食べるときにはさらりとウンチクを語りながら、味わってみてはいかがだろう。

林田順子=取材・文

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