すっかりグローバルトレンドとなった「フィンランド・サウナ」。本場フィンランドでのサウナの常識を解説します(写真:RossHelen/PIXTA)
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サウナブームが日本を席巻しているのは、今や誰の目にも明らかだ。「サウナ本場の国」北欧フィンランドにあやかり、「フィンランド式サウナ」を謳うサウナ施設も次々につくられている。
だが、果たしてどれだけの日本人が、フィンランド・サウナ本来の特徴を正しく把握しているだろうか。というのも、筆者が住むフィンランドに無数にあるサウナ室と、日本でフィンランド式サウナを謳うサウナ室とでは、得てして環境も入浴法も別物なのだ。
「フィンランド・サウナ」を曲解しているのは、決して日本人だけではない。「今やサウナは世界全体で1700万もあると推定されるが、国外で『フィンランド・サウナ』を名乗るサウナのほとんどは、実際にフィンランドで体験できるサウナとは全く異なったものになってしまっている」と、話題の新刊『
「最新医学エビデンス」と「最高の入浴法」がいっきにわかる!究極の「サウナフルネス」世界最高の教科書』の著者カリタ・ハルユ氏(サウナ・フロム・フィンランド協会会長)も憂いている。
では、本当のフィンランド・サウナ体験の「必須条件」とは何なのか?
同書の翻訳を手掛け、フィンランド在住のサウナ文化研究家・こばやし あやな氏が、サウナ室のつくりから入浴法まで、本場フィンランドでのサウナの常識を解説する。
「焼け石に水」のロウリュは好きなだけ
フィンランド・サウナ体験の最たる特徴が、ストーブの上で温められた石に柄杓で水をかけ、噴き出す熱々の蒸気(=ロウリュ)を浴びる入浴法だ。
つまり、素肌がロウリュによって心地よく刺激され、身体がじんわり温まるのを楽しむリラックス法こそが、元祖サウナ浴なのだ。
だから、たとえば、赤外線サウナを「サウナ」と認めたがらないフィンランド人も多い。
サウナの国の民たちは「ロウリュこそがサウナの魂そのもの」だと主張する。
ロウリュというメソッドは、日本のサウナ室でも近年よく模倣される。
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しかしフィンランド人がそれらを体験すると、戸惑うことが多いようだ。
その理由は、大きく2つ。
「入浴者が自由にロウリュできない」のと、「サウナ室が高温低湿すぎて、ロウリュ本来の心地よさが楽しめない」点だ。
本場フィンランドのサウナ。天井の低さが印象的(写真提供:こばやし あやなさん)
日本の多くの施設が導入する、定時に自動で水をストーブに散布する「オートロウリュ」は、フィンランドでは見かけない。
入浴者自身が好きなタイミングで打ち水をする、いわゆる「セルフロウリュ」が絶対なのだ。
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