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その後、日本でも学外の人たちとの交流が増えると同時に、教育実習でも学校という世界の窮屈さを感じ始める。結果的に、就職したのは東京の動画制作会社。その時の代表が、のちにREBORNを立ち上げる皆木さんだった。

「その後はリクルートに転職し、福岡拠点で教育サービスの営業をしていたんですが、皆木さんから誘われて2022年の9月からREBORNにジョインしました。日本酒事業は面白そうだし、ベンチャー立ち上げの初期から関われるのも貴重かなと思ったんです」。

なるほど。では、このタイミングで皆木さんにご登場いただきましょう。加奈さんと二人三脚という体制とのことですが、なぜ彼女を誘おうと思ったんですか。

「前の会社のときも動画のことはまったくわからないのに、猛勉強して1年後にはリーダーになりました。とにかく、吸収力や探究心がすごい。

REBORNの創業期は僕一人で『MINAKI』の開発をやっていたんですが、商品も完成して飲食店から好感触を得た段階で声をかけました。福岡から呼び戻すわけなので、責任が重いですから」。

2021年にREBORNを創業し、「MINAKI」シリーズを開発した皆木研二さん。

2021年にREBORNを創業し、「MINAKI」シリーズを開発した皆木研二さん。


皆木さんが睨んだとおり、加奈さんは日本酒の知識をゼロから身につけ、入社から数カ月後には利酒師の資格も取得。今では一流のシェフやソムリエとも対等に話せるようになった。

というわけで、日本酒好きの皆木さんが1年間かけて開発した「MINAKI」ブランドをご紹介しよう。

左から完成順に「極幻 GOKUGEN」、「珀彗 HAKUSUI」、「極幻 FORMULA.2」。

左から完成順に「極幻 GOKUGEN」、「珀彗 HAKUSUI」、「極幻 FORMULA.2」。


加奈さん、解説をお願いします。

「『極幻 GOKUGEN』と『極幻 FORMULA.2』は複雑な旨味が重なる純米大吟醸で、精米歩合がそれぞれ17%、29%と丁寧に酒米を磨きあげることで、雑味のない至高の味わいを実現しました。『珀彗 HAKUSUI』はシャンパンのようなドライで透き通る飲み口が特徴のスパークリング日本酒です」。

購入者に届けるセットは化粧箱、ブランド紹介冊子、ギャランティーカード付き。

購入者に届けるセットは化粧箱、ブランド紹介冊子、ギャランティーカード付き。


開発を依頼する酒蔵を選ぶにあたって、皆木さんはゼロベースから一緒に考えてくれる若手の杜氏を探した。

最終的に契約したのは山形と青森の酒蔵。20代後半と30代の若い杜氏でチャレンジ精神も旺盛だった。

酒蔵に赴いて仕込み樽を覗き込む皆木さん。

酒蔵に赴いて仕込み樽を覗き込む皆木さん。


“究極”ゆえ、販売価格は2、3万円前後とかなりお高い。しかし、「コンラッド東京」「フォーシーズンズホテル」「神楽坂 まる富」「鮨 龍次郎」など、約100軒の錚々たる高級飲食店がそのクオリティを認めて導入している。

「『MINAKI』は単体でももちろん美味しいですが、料理や空間に合わせて楽しめるのもこだわり。しかも、和食やお鮨以外でも中華やフレンチなどにもマッチするんです。

たとえば、フレンチの人気店、『銀座 大石』さんではコースの最初の前菜に合わせていただいています」。

旬の野菜をフレンチの技法で調理した一皿とのマリアージュ。

旬の野菜をフレンチの技法で調理した一皿とのマリアージュ。


皆木さんの右腕として働く加奈さんの仕事は、導入店の新規開拓がメイン。3本の720ml瓶を携えて忙しく飛び回る日々だ。

専用の保冷バッグが仕事道具。

専用の保冷バッグが仕事道具。


これに仕事用のカバンが加わるため、かなり重い荷物となる。

「スポーツ好きなので、これは筋トレ感覚ですね」と加奈さん。

「スポーツ好きなので、これは筋トレ感覚ですね」と加奈さん。


同時に、販売方法やメニュー提案など、導入を決めた店舗へのサポートも行う。

実際に納品した酒樽とMINAKI極幻。

実際に納品した酒樽とMINAKI極幻。


「ある飲食店さんの受注が決まったときに、お店の10周年記念にオリジナルの酒樽を作りたいと言われたんです。もちろん、樽を制作したことはなかったんですが、専門の会社を探すところからデザイン提案まで行い、無事納品して喜んでいただくことができました」。

さらに、イベントなどでも「MINAKI」の味を積極的にPR。今年2月には新宿伊勢丹が上顧客のために開催する「丹青会」に出店した。普段、店頭に並ばない特別な商品が用意されるイベントだ。

「丹青会では日本料理店の『よし邑』さんとコラボして、料理とのペアリングを楽しめるブースを出店しました。おかげさまで大盛況で、飲んだ方が気に入って複数本購入されるなど、直接お客様のお声をいただける貴重な機会になりました」。

販売用の棚には世界的な品評会で受賞した際の盾も並べた。

販売用の棚には世界的な品評会で受賞した際の盾も並べた。


2022年の完成以降、ものすごいスピードで認知度を上げている“究極”の日本酒。加奈さん、今後の展開が楽しみですね……ってあら? 何をしているんですか?

「ボードゲームのスクラブルで『MINAKI』を作ってみました」。

「ボードゲームのスクラブルで『MINAKI』を作ってみました」。


「以前は正直、日本酒はそんなに飲んでいませんでした。でも、いざ飲み始めると好みの日本酒がたくさん見つかって、今まで知らなかっただけなんだと気付きました。普段日本酒を飲まない方にも、日本酒の美味しさを伝えていきたいですね」。

ありがとうございます。

では、最後に読者へのメッセージをお願いしますね。

加奈さんが「初めて飲んだとき、衝撃を受けた」という日本酒、ぜひご賞味ください。

加奈さんが「初めて飲んだとき、衝撃を受けた」という日本酒、ぜひご賞味ください。



[取材協力]
REBORN
https://minaki-sake.com

石原たきび=取材・文

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