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癒し系のペットみたい

フランス人もびっくり!するほど初代と2代目のカングーが日本で売れたのは、何といってもノホホンとしたペットのようなキャラクターのおかげだろう。

くまモンやふなっしーのような“ゆるキャラ”が人気者になる日本独特の文化に、カングーはぴたりとハマった。

きりりと凛々しいフロントマスクでかっちょ良くなった新型カングーからは、ゆるキャラ風味は減った。けれども、ドライバーを癒やしてくれる存在であることは変わらなかった。

まず、ふんわり優しい乗り心地が癒やしだ。ディーゼルとガソリンが設定されるけれど、力強いディーゼルは頼りがいがあり、軽快なガソリンは朗らかな気分になる。どちらにも癒やされる。

乗り心地の良さに大いに貢献しているのがシートの掛け心地の良さ。ヨーロッパでのカングーは約半数が商用車として使われる。働く車であっても、フランス人は働く人のことを考えて、シートをケチらないのだ。フランスの人権意識が……という話を始めると長くなるのでストップ。

いずれにせよ、新型カングーも、信頼できるブリーダーから家族に迎え入れたフレンチ・ブルドッグのようなキャラクターだった。

モータージャーナリスト
サトータケシ
フリーランスのライター・編集者。新型カングーのことを本気で気に入ったようで、「MTだったら購入を検討したい……」とのこと。「ルノー・ジャポンには、MTの導入を検討しているのは取材済み」だとか。

商用車らしさを楽しみたい

「日本人が好むルノーは極端ではないか?」。フランス人はきっとそう思っている。

長らく日本では、商用車ベースのカングーと高性能モデルのルノー・スポール(RS)だけが売れるメーカーだったから。RSはアルピーヌとブランドを統合して人気を保った一方、カングーは14年ぶりにフルモデルチェンジを行いました。

カングーの魅力の根本は、基本設計は商用車で、それを無理やり乗用車仕様にしたところ。商用車ゆえの不足を自ら補って乗る楽しみとでも言いましょうか。

フランスで商用仕様と並行して展開されるカングーは働き者に快適な車でなければならない。14年で進んだ運転支援技術を詰め込んで、外装まで一気にモダンになった3代目は、職業ドライバーの気持ちになれば当然の進化と言えるはず。

一方、シンプルな機能性とキャラクターのような見た目を持つ先代カングーを愛でてきた、日本人の屈折したカングー愛がそれをうまく受け止めることができるのか、いささか不安ではある。

とはいえその成り立ちが変わらない以上、これはこれで工夫して楽しむシン・カングー人が生まれることを期待したい。

モータージャーナリスト
西川 淳
フリーランスの自動車“趣味”ライター。得意分野は、スーパースポーツ、クラシック&ヴィンテージといった趣味車。愛車もフィアット500(古くて可愛いやつ)やロータス エランなど趣味三昧。


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