「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは……▶︎すべての写真を見る 初めてパリに行ったのは15年くらい前。街がおしゃれで感動したのを覚えています。その後もたびたび訪れていますが、ずっと変わらない街ですね。
いつもロンドンに寄ってから行くので、ロンドン特有のストリート感と比べるとやはりクラシックなイメージです。
パリでは、パレ・ロワイヤルやルーブル美術館あたりから、チュイルリー公園を通ってエッフェル塔まで川沿いに走るコースが好き。往復で10kmほどを走りながら、壁や看板など、街にある色を探します。
パリに限らず、ドイツ、トルコ、メキシコなど、どこへ行ってもそこにしかない色を探すのが好きで、太陽の高さや強さのせいなのか、それともそこで暮らす人々のDNAなのか、国によって街の色がまったく異なるのが面白い。
昨年パリで走っているときに、公園でとてもいいグリーンのガーデンチェアを見つけました。ちょうど自宅の庭に置くチェアとテーブルを探していたこともあって、早速リサーチ。それで知ったのがフェルモブというブランドです。
パリのカフェでよく使われている折り畳み式のチェアは、19世紀後半のカフェ文化全盛期に生まれたデザインを、フェルモブが最先端の塗装技術で復刻生産しているのだとか。
それで帰国後、公園にあったものと同じ「ルクセンブール」という固定式のアームチェアと、折り畳み式のテーブル&チェアを購入しました。
「ビストロ」シリーズ。フェルモブの屋外家具はパリ市公認で、ほかにもニューヨークのタイムズスクエアやブライアントパークでも使用されている。テーブルφ600×H740mm 3万8500円、チェアH820×W425×D420×SH450mm 1万7600円/ともにフェルモブ(ニチエス 03-5413-3341)
色はウィローグリーンとシダーグリーン。このシリーズはなんと22色もあり、グリーンだけでも5種類、それぞれニュアンスのある色合いが特徴なんです。
パリの公園で見たチェアも深いグリーンで、こういった色とデザインのチェアが、公共の場で使われていることがすごいなと思いました。
日本の場合、ベンチでも街灯でも、黒、白、シルバーなど目立たない色で、デザインは実用性に徹して、いかにも頑丈そう。
パリではベンチやブランコなどでも色や質感、デザインを大事にしていて、そういった備品一つひとつが街の景観をつくっています。
日本にもいいプロダクトデザイナーがたくさんいるし、今後はどんどん起用して、街にいい色やデザインが増えていけばいいなと思います。
[藤井隆行 プロフィール]東京を代表するブランド「ノンネイティブ」のデザイナーで、ファッションからライフスタイルまで一貫したこだわりを持つ。「3月末からノンネイティブのAW展示会を開催。最近は何だか目まぐるしい日々を送っていますが、頑張ります」。
「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは…… 世の中のありとあらゆるプロダクツから、「ノンネイティブ」藤井隆行さんが独自のセンスと審美眼でモノをセレクト。デザインとは? 実用性とは? 買い物の醍醐味とは? ブランド名や巷の情報に惑わされず、本当に自分に必要なモノと出会う方法を指南。
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