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13歳というタイミングは、昔でいえば元服をして、大人の仲間入りを果たす年齢だ。初陣を迎え、成人男子としての強さを示すことが期待されだす時期に差し掛かっている。

そして7歳といえば「男女7歳にして席を同じくせず」という言葉もあり、幼児から一人前の男子候補である少年へという準備を始める年齢だ。男たるもの、なんていう表現は今の時代にはそぐわないかもしれないが、「パパと息子」という関係から、「男と男」の関係に変わった3週間だったように思う。

(写真:『自分を探すな 世界を見よう 父が息子に伝えたい骨太な人生の歩き方』より)

(写真:『自分を探すな 世界を見よう 父が息子に伝えたい骨太な人生の歩き方』より)

愛とは、お互いを見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめることである―(サン=テグジュペリ)
この言葉は、まだ飛行機に乗ること自体が危険な冒険だった時代に、郵便輸送のために、ヨーロッパと南米の間の航路開拓に命を賭けたパイロット、サン=テグジュペリの名言だ。小説『星の王子さま』の作者といったほうが、わかりやすいかもしれない。3週間の旅の間、私の頭の中には何度も彼のこの言葉が浮かんできた。


男と男は向き合って話さない

22日間、7000kmにわたる長い長いドライブの間、スマートフォンにもさすがに飽きてしまった息子たちは、代わる代わる助手席にやってきた。

旅の一行で唯一の運転手であった私は、終始前を向いて運転しているので、もちろん横にいる息子たちに目を向けることはできない。クルマのフロントガラスには刻一刻と移り変わっていくアメリカの大自然が映し出されるなか、私と息子たちは横に並び、同じ方向を向き、同じものを眺めながら、いろんな話をした。なにしろ、時間はたっぷりあった。

男同士が向き合って話し対峙するのは、敵か、もしくは敵とも味方ともまだわからない交渉相手だけでいい。これは小学生男子だって同じだ。対等な男同士は、向き合って話さない。大事なことは、並んで話すものだ。そして、対等な男同士の最高の意思疎通に、それほど多くの言葉は要らない。

男3人、3週間のアメリカキャンピング旅。私が現地での出来事をネットで発信しながら旅したこともあり、この旅には大変な反響があった。

「男のロマンだ」「父親だからこそ」「最高の教育」そんな言葉が目立ち、息子の友人のお母さんから、「うちの旦那にも見習わせてくださいよ〜」と冗談まじりで言われたこともあった。

ただ、1つハッキリさせておきたいことがある。あの旅は、息子たちのために行ったわけではない、ということだ。むしろ私自身のために行った旅であり、息子たちを連れて行ってあげたのではなく、ついてきてもらったというほうが正しい。

子どもによい経験をさせてあげたいと心底考えている親は少なくないが、私の場合は、自分が3週間も気ままな旅をするためのアリバイ作りの面があったことを、ここに白状しておこう。

(写真:『自分を探すな 世界を見よう 父が息子に伝えたい骨太な人生の歩き方』より)

(写真:『自分を探すな 世界を見よう 父が息子に伝えたい骨太な人生の歩き方』より)


少しだけ、私のこれまでの人生を振り返ってみたい。


外の世界を知らない大人だった

私の青春は、インターネットの中にあった。高校時代にはじめてパソコン(Macintosh Color Classic)を買ってもらい、それからはパソコンとインターネットの世界に夢中だった。深夜であれば安くネットに接続できるという理由で、毎晩23時から朝8時まで向こうの世界にどっぷりだった。

そんな生活をしているので、勉学はおろか、リアルの世界とのつながりはどんどんおろそかになっていった。結局、大学を1年留年して就職をしたのだけれど、ほとんど外の世界のことを知る機会のないまま大人になってしまった。

社会人になってからは、出張で日本全国や海外、いろいろなところに行かせてもらったが、仕事で行く旅は、当たり前だが仕事に集中しなければいけない。外の風景を楽しんだり、ちょっと気になる店を見つけて入ってみたり、なんて旅を楽しむ余裕はほとんどなかった。

そんな私にとって、息子たちとキャンピングカーでアメリカを巡ったあの旅は、もう1つの青春を取り戻すような意味のある旅でもあったのだ。

知らない土地を旅しながら、これまで見聞きしてきた知識が、生の経験とつながり、1つひとつの「点」が線となり、夜空に星座を描くように、そこに生きる人たちの生活のリアリティを頭の中に描き出されていった。

3週間の旅の中で、私は息子たちの成長を実感せずにはいられなかった。

とくに印象的だったのは、冒頭に書いたネバダの砂漠の場面だ。何もない荒野のなか、映画撮影ごっこをやろうぜ! と助手席の長男と盛り上がり、彼は砂漠の荒野を走り去るキャンピングカーを撮影するために、クルマを降りてカメラマン役をやってくれた。

撮影を終えた長男が、はるか遠くから一本道を歩いてくる姿を見ながら、(あぁ、コイツはもうすぐ、俺の前を通り過ぎ、自分の道を歩いていくのだな)と深く心に感じた瞬間だった。


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田端 信太郎=文
東洋経済オンライン=記事提供

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