言葉③「こだわりを通して仕事にしたいのなら、人の倍やらないと成立しない」
Q:梅原さんは、「ゲームが好きだ」という思いを貫きながら歩んでこられたのはなぜだと思いますか? 好きなことを仕事にすると、好きだけじゃなくなると思いますが、じゃあこだわらないのかって言うと、めちゃくちゃこだわるんですよ。「これだけ練習したら、こだわっても許されるな」というレベルまで持っていくんですよね。だから、その2つを両立させたくて、ギリギリのバランスを自分としては取っているつもりです。
Q:「好き」を仕事にするには、「こだわり」「結果」のバランスを自分で保つ必要があるということですか?
そう思います。僕は、こだわりたいという気持ちが強くあるので、結果どうなるかというと練習時間がとんでもなく増えるんです。それをしなくなったらもう仕事じゃないし、趣味でやっていればいい。だから、そういうこだわりを通して仕事にしたいんだったら、人の倍、大げさじゃなく多分倍ぐらいやらないと、成立しないだろうと思います。
Q:好きなことがあっても、色んな理由で一歩を踏み出せない人がいると思うのですが、梅原さんからアドバイスをお願いします。 2つあります。1つは、努力する人間がこの世にいる以上、変わらないと追い抜かれるということです。安定だと思っている立場を、周りはその立場を取って代わろう、もしくはもっと先に行こうと思うわけですから。だから、多少怖くても、そもそも挑戦しないと落ちていくのは免れないんですよ。
それからもう1つ。なぜみんなチャレンジを敬遠するかというと、失敗した時に周りから馬鹿にされるとか、生活が苦しくなるとか、とにかく色んな不都合があると思うんですが、この(コントローラーの)レバーレスに変えた時に、最初はみんな言ってきたわけですよ。「成績落ちてるのを見てるの嫌だよ」「早く戻しなよ」と。
でも、自分は「今に見とけよ」と思っていたんですよね。それでも、誰もが認める成果を出し始めた時に、「よし自分良くやった」と思ったんですよ。結局、自分で自分を褒める、またいっそう好きになる、「やっぱお前は信用できる男だぜ」という感じ。自分がそう思えることが何よりも大きな収穫なんですよね。
Q:自分にベクトルを向け続けることが、壁を乗り越える力に変わるということですね。 わざわざきつい思いをして挑戦することで、年々自分を好きになっている実感があります。目先の成果とか、失敗した、成功したということではなくて、「俺はチャレンジした」、「その俺はえらい」「かっこいい」って。
ちょっと変換できると、挑戦するのが怖くなくなる。むしろ楽しみだし、挑戦することを見つけられるとワクワクするような、そういう体質というか、そういう風になるんじゃないかなと思います。
梅原大吾(うめはら・だいご)
1981年、青森県出身。11歳で格闘ゲーム「ストリートファイターⅡ」に出会い、15歳で日本一、17歳で世界一に輝く。23歳の時にゲーム界に別れを告げて介護職などに就くが、2008年に電撃復帰。2010年米国企業と契約を結び、日本人初のプロゲーマーとなる。同年8月「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネスブックに認定され、現在は3つのギネス記録を持つ。プロゲーマーの世界的第一人者であり、海外では「ビースト(Beast)」の異名を取る。