特集「プロご指名の本命デニム」とは…… デニムはファッションの基本の“キ”であり、アメカジの一丁目一番地。しかし、パンツ専業ブランド「ニート」のデザイナー、西野さんは「年齢を重ねるにつれ、はきこなすのに難しさを感じる」と語る。
最近、再びデニム熱を燃やし始めたという彼の愛用品は……。
西野大士●さまざまな人気ブランドのプロモーションを手掛ける『にしのや』の代表にして、パンツ専業ブランド「ニート」のデザイナーも務める業界のトップランナー。フリーマーケットや古着イベントなども企画する。愛称は“カポネ”。
▶︎すべての写真を見る 無関心な男を振り向かせたカバーオールの魅力
古巣であるブルックスブラザーズを退社後、フリーPRとして活動を始めた西野さん。その過程で、ある同業の先輩の着こなしに大きな影響を受けたという。
「当時、ユナイテッドアローズでプレスを務めていた小木基史さんが、スーツの中にGジャンを合わせてスタイリングしていたんです。それがめちゃくちゃカッコよくて、僕も始めました。
それまでGジャンを着てきた記憶がないので、もしかしたらGジャンを取り入れたのはそれが初だったかもしれません」。
西野さんはそれ以降、デニムといえばボトムスよりもトップスに手を伸ばすようになったという。
「でも、カバーオールは数回しか手を出していないんですよ。周りの人が着ていても、あまりピンと来なかったんです。今思えば偏見でしたけどね」。
その食わず嫌いを払拭したのが、広島の古着店「リード」でゲットしたというこちらのカバーオールだ。
このカバーオール、リーバイスでもなければ、マニアックなハウスブランドでもない。実は、ある企業の公式ユニフォームでなのである。
「アメリカの鉄道会社『ノーフォーク・アンド・ウェスタン社』のものです。1938年から’82年まで実在していた会社で、チンストラップとチェンジポケットがついた、古着界隈では通称“チンチェン”と呼ばれているものですね」。
「今となっては古着市場でもそうそうお目にかかれるシロモノではありません。’80年代前半にクローズしてしまったことも考えると、おそらく会社としてのピークは’40年代〜’60年代ぐらいでしょう。このカバーオールもおそらく、その時代に作られたものだと思います」。
西野さんはこのカバーオールに、ニートと化学反応を起こす可能性を感じ取ったようだ。
「なんとなく、ニートに合わせたらまた違う見え方をするのかなって思ったんです。だから軍パンやジーンズ、カーハートみたいなワークパンツなどではなく、スラックスみたいなちょっとドレッシーなスタイルに投入するのがいいんじゃないかと。
それこそ、小木さんがスーツの中に一点、Gジャンを入れた感覚に近いのかもしれませんが」。
きれいな白のスラックスとヴィンテージのカバーオールのアンバランスさがいい意味で絶妙な個性を醸し出す。さらにこの日は、ミュール型のニューバランスで程よくスポーティさとユルさも演出。すっきりとしたパンツとの相性も絶妙である。
2/2