特集「プロご指名の本命デニム」とは…… デニムはメンズカジュアルの大定番だが、業界では合わせ方や選び方に暗黙のルールや原理があったりもするらしい。それを踏襲することで、「分かってるじゃん」の評価が得られるってワケだ。
そこに異議を唱えるのが我らが種市 暁さんである。彼のデニム論を聞けば、自分らしいデニムのはき方を突き詰めていくほうがずっと幸せなのだと安心できるはずだ。
種市 暁●本誌でもお馴染みのファッションアイコンにして、アパレルに限らずあらゆるジャンルのディレクション、プランニングも手がける敏腕。休日はサーフィンやスノボーに明け暮れながら愛犬と過ごすのが最高の癒し。
▶︎すべての写真を見る 「ラクなほうがいい」という天の邪鬼の正論
ビームスでキャリアをスタートさせ、それこそ飯を食うようにデニムを身につけてきた種市さんだが、年を重ねていくなかで変わった部分と変わらない部分があるようだ。
「そりゃいろいろはいてきて学んだ部分はありますよね。中学生ぐらいのときに上野で買ったデニムを、一度洗って2インチぐらい縮ませてしまったこともあります。
……で、『縮んじゃったじゃないか!』と店に持って行ったら逆に怒られたり(笑)。ヴィンテージの良さに触れ、501の“66”や“XX”などに固執し、大枚をはたいてきた時期もありました」。
そして、あるときからデニムは主に2タイプにわかれていったと語る。
「プロダクトに執着するタイプの人は、ヴィンテージを徹底的に追求して、そこに価値を見出していくわけです。『ストレッチは邪道』という概念も、その副産物ですよね。
僕は逆に自分の気持ちに素直なタイプで、ある意味では天邪鬼なんですよ。『ラクなほうがいいじゃん!』って(笑)。もちろん、いろんなデニムの良さを知っていることが前提ですけどね。
食べ物もそうじゃないですか。星つきのお店しか知らない人がB級グルメを貶すのもどうかと思いますしね」。
ラクを追求する姿勢は、アメリカで受けたカルチャーショックに起因しているという。
「業界人の“渡米あるある”ですけど、気合を入れたアメカジスタイルで渡米しても、現地にそんな格好のアメリカ人なんか全然いないんですよ。ラクそうなストレッチデニムで普通の格好をしている人のほうが多いし、むしろそのほうが抜け感があってカッコよく見えるんです。
我々が思うほど、アメリカ人はお洒落に気を遣っていないんですよね。日本の洋服店ではやらない合わせがとにかく洒落ている。そういう紆余曲折があって、考え方も変わっていったのかもしれないですね」。
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