OCEANS

SHARE

現在では従業員数が40名を超えるぐらいの同社だが、当時は10名ほどで、社員間の距離は今以上に近かった。切磋琢磨しながら働き、残業が終わった後には遅い時間までお酒を酌み交わすこともしばしばあった。社長には正直に理由を話し、退職することになった。

「当時の上司 (現在は取締役)と一緒に飲みに行っている時に、辞めようとしていることを伝えましたところ、『残念だけど、いつでも戻ってきてよ』と言ってくれて。会社を嫌いになったわけじゃないし、一緒に頑張った仲間もたくさんいましたし……申し訳ないなって気持ちはずっとありましたね。

またその後、社長とも話すことになったのですが『活躍の場を作ってあげられなかったことを申し訳なく思う』と言われました。無理に引き止められることはなく、私の決断を快く受け止めてくれました。お別れ会では、ジーンとくるものがありました」

こうして、転職することになる。次に入社したのはデジタル系のエージェンシーだった。新しい事業に取り組もうとしているタイミングで、昔働いていた会社の先輩に誘ってもらったそうだ。

「テクノロジーとクリエイティブを融合させて、新しい体験を作っていこう!という取り組みで、ラボのような取り組みが立ち上がっていたんです。アップルウォッチを使って部屋の照明を変えるシステムや、センサーを使って人の動きを検知してコンテンツを操作するというものなど。シニアクリエイティブテクノロジストという肩書だったんですけど、役割としては、企画・制作・ディレクションなどを担当していました」

40歳を迎える頃に、少しずつ心境の変化が

その後、5年ほどで退職することになる。40歳を迎える頃に、少しずつ心境の変化が訪れたそうだ。

「40歳くらいになって、自分の気持ちに変化が出てきました。それまでは、自分自身のスキルアップや好奇心に向かって転職をしていましたが、これまで身につけてきたスキルをいかして、もっと社会に貢献したいと思うようになりました。

特別なにか大きなことを成し遂げたいってわけでもないんですけど、子供が生まれたことも大きかったです。彼らが大人になる頃には、少子高齢化がさらに進んで、彼ら世代の負担が大きくなるんじゃないかなって。

自分にできるのは微々たることかもしれないんですけど、少しでも負担を増やさずに、次の世代にいいバトンを渡したいなって考えるようになりました」

そんな気持ちを抱くようになり、転職活動をするつもりはなかったが、自然と他の会社のサービスをリサーチするようになったそうだ。保育業界に特化したDX支援企業や、業務効率化の支援サービスなど。実際に会社見学にも行ってみた。

新しい事業の構想に心を動かされ

そんな時、ランチェスターの事業内容が変更になることを知る。開発の受託事業から、SaaS事業に大きく舵を切るという話だった。

「ランチェスターを退職した後も経営陣たちとちょくちょく飲みに行ったりしていたので、付き合いは続いていました。新しい事業をするという話は何度か聞いていたんですけど、ある日『事業転換して自社サービス事業を開始しようと思っている。戻ってきて一緒に作ってくれないか?』と言われました」

過去にも何度か戻ってきてほしいという話はあったというが、事業内容が以前と同じだったため、戻るという選択肢は考えていなかったそうだ。しかし本格的に新しい事業を始める流れになり、その構想に心を動かされることになる。

「すぐに決めたわけではなく、1カ月ほど経った頃だったと思います。取締役にFacebookメッセンジャーで『この前の話なんですけど……戻りたいです』って連絡しました。『え、本当に!? ありがとう! 社長も大歓迎だって。いろいろ段取りするよ』という反応をしてもらい、トントン拍子で進んでいきました。入社が決まった後ですが、改めて社長に時間をもらいました。自分がやめた後の数年間、どんなスキルを身につけてきたか、プレゼンを兼ねた自己紹介をしたんです」

こうして立ち上げフェーズから関わり始めたのが、現在の社名でもある「MGRe(メグリ)」というサービスだ。企業が簡単にモバイルアプリを導入することができて、顧客である消費者に対して、プッシュ通知やニュース、クーポンの配信を管理画面上から簡単に配信することができる。データ分析機能により施策の改善をスムーズに行うことができる。

瀬尾さんが考えていた「社会貢献性」とどのようにつながるサービスなのだろうか。

「MGReは、アプリマーケティングに必要な各種ソリューションがセットになったサービスで、アプリを通じた顧客とのコミュニケーションにより、企業と顧客の関係性を深めることができるサービスです。 エンドユーザーは生活が便利で豊かになることができ、企業側も、効率良くアプリを運用することができます。 エンドユーザーの生活をより良くでき、また、業務効率化によって企業側の人手不足に貢献できる……こういった面で、社会に貢献できると考えています」


4/4

次の記事を読み込んでいます。