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日々の瞬間を楽しむ。そんな話を日常的に聞いて育ったという愛流が、洋介との思い出を語る。

「母と妹が寝たあと、父はお酒を飲んでいて、そのときに父は、学校の先生やほかの大人たちが教えてくれない、父が見てきたこと、父が感じたことをそのまま僕に教えてくれました。

それは父からしか教えてもらえないことで、すごく貴重なもの。ただそのときの父は酔っているから、最後のほうは何を話しているのかよくわからなかったですが(笑)」。

愛流は洋介が楽しげに働く姿に憧れ、今の仕事に興味を持ったという。

「気持ちを伝えたとき、父からは『舐めんなよ』って言われました。そのときは『ぜんぜん舐めてねえよ』って思っていましたが、父の言葉の重みが、作品を重ねるごとにわかってきたような気がします。大変なときにこそ『絶対にこの山を越えてやる! 』という思いでいます」。

これを聞き、洋介は先ほどまでの高めのテンションから打って変わり、我が子に優しいまなざしを向けながら、噛んで含めるように語り始めた。 

「いいか、言っておくけどそれはおまえの山だからな。おまえが越えるべき山はおまえしか越えられない山だから。

お父さんが登っている山も、お父さんにしか登れない山だ。おまえが登っている山は、お父さんの山じゃない。だから誰もほかの誰にもなれない、つまり誰もが自分の道しかないんだぞ。それをはき違えて何者かになろうとするとめちゃくちゃミスるから。

もちろん俺より有名になって稼いでほしいって思うけど、もしそうなってもそれは決しておまえは俺の道を踏み越えたわけじゃない。おまえはおまえなりの道を行っただけだからな」。



同業者になることに対し父親としてどう思うか訊くと「息子なので、まあいいんじゃんって感じです」とあっさりしたものだったが、これが娘となると話が変わってくるようで。

「俺にはこいつの母親とは違う、また別のお母さんから生まれた娘がいるんですけど、もし芸能界に入りたいって言ったらやめさせようかな。本人の意思を尊重しつつうまく誘導して、別の仕事に興味を持たせるかも。

あ、そうそうワンチャン、アラブの石油王の嫁とかにならないかなって思います(笑)」。

洋介は20〜30代は国民的俳優でありながら、周囲の視線を気にせずファッションや音楽などストリートカルチャーの海で気持ちよく泳いでいたが、40代になった今はそれに加え、腸活や農業などの魅力を自由に発信している。まったくシーンが異なるが、ちゃんと共通点がある。

「これもただ自分が楽しい、気持ち良くいたいと考えて行動した結果ですね。自分の心のコンパスが、そういうところにちゃんと自分を導いてくれるんです。

俺のコンパスは北とか南とかを向いているんじゃなくて、まず楽しいかどうかで反応するから、楽しくなさそうならやらない。胸のドキドキっていうのかな。『ワンピース』のルフィみたいなこと言っちゃっていますけど(笑)」。

窪塚洋介●カーディガン43万8900円、Tシャツ6万6000円/ともにザ・ロウ(ザ・ロウ・ジャパン 03-4400-2656)、パンツ7700円/古着、その他すべて私物、窪塚愛流●シャツ28万3800円、リング(左中指)6万3800円/ともにメゾン マルジェラ(マルジェラ ジャパン 0120-934-779)、パンツ3万580円/古着、その他すべて私物

窪塚洋介●カーディガン43万8900円、Tシャツ6万6000円/ともにザ・ロウ(ザ・ロウ・ジャパン 03-4400-2656)、パンツ7700円/古着、その他すべて私物、窪塚愛流●シャツ28万3800円、リング(左中指)6万3800円/ともにメゾン マルジェラ(マルジェラ ジャパン 0120-934-779)、パンツ3万580円/古着、その他すべて私物


撮影中でも下ネタを話したり兄妹で母が違うなど、一般的な家族だとナイーブなものとして扱いそうなことも洋介と愛流の間では当たり前のこととして会話にあがる。“父がクボヅカ”という現実を、愛流は息子としてどう受け止めてきたのか。

「父親なんですけど父親って感じがしない」と言い、さらに続ける。

「例えば友達の父親の関係性と比べると、うちは親子の距離がすごく近いんです。それは父が僕目線に立ってくれているというか、いつまでも子供心を忘れないということが大きいのかもしれません。

父が僕の目線でナチュラルに物事を見て、考えてくれるからこそいい意味で父親っぽくないといいますか、友達とか兄弟みたいな。兄妹で母親が違うことやエグい下ネタも子供みたいに言ったりするので。

そんな中で育ったので、いつしか恥ずかしいと思うほうが逆に変だなと思うようになりましたね」。

当事者である洋介に、愛流を育てる際に目線を合わせることを意識していたのか訊くと、答えはNO。

「全然(笑)! ただ、例えば教育のひとつとして、横断歩道を渡るときに信号が青であるかどうかを教えるわけじゃないですか?

それと同じくらい大事なのは、この世界で生きているっていうことは“マジで楽しい”っていうこと。こいつが生きていくうえで“楽しい”ということを知ってもらうことは必要だと思っていました。だからそれだけはすごく意識していましたね」。

インタビューを終えた瞬間「あー、なんかいつもより疲れた(笑)」と言いながら、どこかほっとしている愛流。これに洋介が「こんなんで疲れたとか言ってたらおまえやばいよマジで」とつっこむ。

一連のやりとりを見たスタッフが「本当にふたりは友達みたいですね」というと、洋介が何かを思い出したように。

「高校の卒業式の日、旅立ちの記念に愛流と愛流と仲が良かった男友達ふたりに、俺の大好きなセクシー女優さんのDVDを贈ろうと思って、手書きのメッセージまで書いていたんだけど、こいつが『お父さん、それだけはほんまにやめて』って。

だからいまだにリビングのテレビの横に3つ置いてあるんですよ。おい愛流! あれどうすんねん(笑)!」。
窪塚洋介●1979年生まれ。神奈川県出身。'95年に俳優デビュー。18年ぶりとなる邦画長編映画単独主演作『Sin Clock(シンクロック)』が公開中。窪塚が演じるタクシー運転手の高木シンジが、ひょんなことから大金を得るチャンスが舞い込み、強奪する計画を立てるが意外な方向へと展開する……、という目が離せない作品。

窪塚愛流●2003年生まれ。神奈川県出身。'18年に映画『泣き虫しょったんの奇跡』でスクリーンデビューを果たした。'21年から本格的に俳優活動を開始し、みずみずしくも躍動的な存在感を放ち着実に出演作品を重ねている。現在公開中の映画『少女は卒業しない』では佐藤駿役で出演中。


横山泰介=写真 菊池陽之介=スタイリング 佐藤修司(botanica make hair/窪塚洋介)、小嶋克佳(Tron/窪塚愛流)=ヘアメイク オオサワ系=文

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