医療費はタダ。語学学校に通うとお金がもらえる!?
社会保障が充実しているフィンランドでは外国人でも医療費はタダ。梅沢さんがコロナに罹患したときも医療費はかからず、日本語の通訳付きでケアは手厚かったという。
さらに、将来の働き手になることを見越して、フィンランドの語学学校に通う奥様には国から給与まで支払われていたらしい。
「お金をもらいながら学校にいく変なシステムなんですよ。人口が少ないので働き手を作りたいという先行投資なんでしょうね。そこまでしてくれるから、こっちも働こうっていうマインドになるんですよ」。
さすが幸福度No.1の国だけあるが、手厚い社会保障の裏に潜むデメリットも感じるという。
「稼いだ分は税金として持っていかれるので、『いい車に乗りたい』『いい時計が欲しい』という価値観の人には合わないかもしれません。僕自身、ある程度そういったプライドを置いてきたつもりだったんですけど、たまにもっといい家に住みたいなぁと思うことはあります。
フィンランドに来てから得たこともたくさんあるので、自分をうまく納得させていますね」。
長くて寒い冬、乏しい食文化……帰国が頭をよぎる
寒さで凍ったHietaranta Beach。
「長く住んでいると日本の良さが際立ってきちゃうんですよね……。年末から年始にかけて3人の日本人が帰国しました。もう無理。寒いって。理由はそれぞれですが、長い冬がきついのも大きな要因ですね」。
フィンランドの冬は長い。寒い日はマイナス20度を超えることもあり、日照時間が6時間程度の日が数カ月続く。日照時間とうつ病は相関関係があると言われるが、事実、フィンランドはメンタルヘルスの問題を抱える人が少なくない。長くて寒い冬を耐えるのは過酷なサバイバルなのである。
「サウナはありますが、温泉はありません。きついときに支えになるのが食や友達だったりするんですが、フィンランドの食は乏しいんです」。
日本を出るときに友人たちが出汁をたくさん持たせてくれた。「絶対に出汁が飲みたくなるからって。本当でしたね。和食ってすごいです(笑)」。
海外生活が長くなると日本食が恋しくなるというのは誰もが通る「あるある」だが、自分のメンタルが支えられていたと気付くのは、52歳という年齢もあるかもしれない。
「髪を切りながら人の話を聞く機会が多いんですが、同世代の日本人は『病院食は絶対和食がいい』って言ってて(笑)、どのタイミングで帰るかをみなさん結構考えていますね。僕自身、日本食がいかに自分にとって存在が大きいか、日本を離れる前は気付きませんでした」。
ヘルシンキには和食レストランはあるが高い。写真のセットで約17ユーロ(約2400円)。ココイチや吉野家など、安くて美味しい日本グルメの価値を再確認したという梅沢さん。「地方によって雑煮の中身が違うとか、日本のポテンシャルを改めて感じます」。
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