「自分を大切にする」国民性に最初は戸惑い
ヘルシンキに移住後、「ワーク・ライフ・バランス」はどう変化したのだろう。
「今は週休2日で、8時間勤務です。それは法律で徹底されています。それ以上働くと、家族を大切にしてないとか、自分の人生をないがしろにしてるっていう空気になっちゃうんですよ(笑)。なので、以前よりも自分の時間が増えましたね」。
ヘルシンキ中央図書館。2019年に「世界一の公共図書館」に輝いた。梅沢さんの自宅からは徒歩圏内だ。
休みの日は散歩をして過ごすことが多いという。
「日本だと休みの日も銀行へ行ったり、なんだかんだ予定が入ってましたが、こっちだと何もしなくていい休みが結構あります。
予定通りの日程をこなす休みじゃなくて、そのときの気分に合わせて行動ができる日。めちゃめちゃ幸せですね。思考を整理できるし、気付きがたくさんあります」。
梅沢さんの自宅から徒歩で約30分のところにある公園。「ヘルシンキの中心部には伊勢丹のようなデパートがある一方で、少し歩けば葉山のような避暑地が広がっています」。
自由な時間を手に入れた梅沢さんだが、最初は日本と違う価値観に戸惑うことも多かった。
「フィンランドは自分がいちばん大事という考え。日本のようにお客さんが神様ではないから、家族の誕生日を理由に仕事を休む人もいます。
仕事が終わってなくても必ず終業時間には帰っちゃいますし、郵便物が予定通りに届かないことも多々。最初はスムーズに進まないことに苛立つこともありましたが、フィンランド時間と割り切ってしまえば、普通になりました」。
収入は減。お金を使う価値観が変わった
気になるのは収入面だ。
「額でいうと日本で働いていたときより減りました。カットの単価は神宮前では最終的に9000円をもらってましたが、ヘルシンキだと女性で85ユーロ(約1万2000円)、男性は75ユーロ(約1万1000円)です。単価は高いんですが、労働時間が短いので」。
客単価が増えても働く時間が少なくなれば収入も減る。ましてや、物価の高いフィンランドでは生活が経済的に厳しくならないのだろうか。
「物価が高いので、逆に本当に必要なものしか買わないんですよ。お金の使い方に関しては価値観がすごく変わったし、物欲がなくなりましたね。
ランチは一度で20ユーロ(約3000円)を超えることもあるので、たまにしか行かないです。代わりに、友人の家で作ったものを持ち寄って食べることは結構あります。そういうコミュニケーションがこっちは多いかもしれません」。
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