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2023.02.15

ファッション

ザ イノウエブラザーズが考える未来のファッション「計算ではなく、もっとずっとヒューマンなもの」

兄の聡さん(左)は1978年、弟の清史さん(右)は’80年生まれ。

兄の井上聡さん(左)は1978年、弟の清史さん(右)は’80年生まれ。

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コペンハーゲン出身の井上聡さんと清史さんによる「ザ イノウエブラザーズ」。

SDGsという言葉が生まれるずっと前から、一貫してソーシャルデザインに基づくビジネスを続けているブランドだ。

そんなふたりが語るサステナブルはとても“人間的”なものだった。

活動のモチベーションは不公平な状況に対する怒り

パレスチナの伝統的な刺繍を胸元にあしらったスウェット。イスラエルとパレスチナのクリエイター集団によるブランド、アディッシュとのコラボプロジェクトだ。4万2900円/ザ イノウエブラザーズ(ザイノウエブラザーズジャパン 06-4307-4775︎)

パレスチナの伝統的な刺繍を胸元にあしらったスウェット。イスラエルとパレスチナのクリエイター集団によるブランド、アディッシュとのコラボプロジェクトだ。4万2900円/ザ イノウエブラザーズ(ザ イノウエブラザーズジャパン 06-4307-4775︎)


「2022年の夏に、日本に移住したんです。生まれたときからずっとデンマークで暮らしていたので、まだ慣れないことばかりですが」。

兄の井上聡さんがそう言うと、弟の清史さんも「僕もロンドンから150km離れたブリストルに引っ越しました。多忙な生活を見つめ直したいと思って」と続ける。

世界で最も古いといわれる中東ヨルダン川流域の刺繍文化。パレスチナの移民キャンプで暮らす女性たちに、写真6のような製品の刺繍を発注。

世界で最も古いといわれる中東ヨルダン川流域の刺繍文化。パレスチナの移民キャンプで暮らす女性たちに、写真上のスウェットのような製品の刺繍を発注。


’04年のブランド設立から、実の兄弟ふたりで走り続けた18年。

「メインとなるのが、アンデスの先住民とダイレクトに取引するアルパカプロジェクト。また4年前に、オーガニックなピマコットンを使ったナチュラルコットン・プロジェクトがペルーで始まりました。

もうひとつが、パレスチナの伝統的な刺繍を製品化するプロジェクトです」(聡さん)。

稀少性の高い「スリアルパカ」を使用した、滑らかな肌触りのカーディガン。ボタンにデザインされた突き上げた拳が、ブランドのシンボルマークだ。5万2800円/ザ イノウエブラザーズ(ザイノウエブラザーズジャパン 06-4307-4775︎)

稀少性の高い「スリアルパカ」を使用した、滑らかな肌触りのカーディガン。ボタンにデザインされた突き上げた拳が、ブランドのシンボルマークだ。5万2800円/ザ イノウエブラザーズ(ザ イノウエブラザーズジャパン 06-4307-4775︎)


今回は聡さんが最初に挙げたアルパカプロジェクトに焦点を絞る。上質なアルパカ素材のニット(写真上)やストール(写真下)こそ、ザ イノウエブラザーズというブランドを象徴するアイテムであり、彼らの原点だからだ。

アンデスの雰囲気を感じさせる多色織りの大判ストール。3万3000円/ザ イノウエブラザーズ(ザイノウエブラザーズジャパン 06-4307-4775︎)

アンデスの雰囲気を感じさせる多色織りの大判ストール。3万3000円/ザ イノウエブラザーズ(ザ イノウエブラザーズジャパン 06-4307-4775︎)


「でも、自分たちをファッションデザイナーだと思ったことは一度もないんです」と聡さんは言う。

確かにふたりとも、小さい頃から服が好きだった。清史さんは12歳でミシンを覚えて自分の服を作っていたほどだし、高校時代にはふたりでオリジナルのTシャツ作りに夢中になった。

しかしながらこの兄弟は、華やかな空気を纏うファッションビジネスの世界とは、どこか別の場所に立っているような気がするのだ。

「安い賃金で働く人がいる一方で、巨大な利益を得る企業がある。そんな不公平な状況に対する怒りが、僕らのモチベーションの根底にあります。いつの日かデザイナーではなく、アクティビストと呼ばれるようになりたいですね」(聡さん)。

設立から3年ほどは明確なビジョンが描けなかったが、’07年に訪れたボリビアへの旅が転機となる。以来ボリビア、ペルー、そしてその国境にまたがるチチカカ湖周辺の、アルパカの故郷であるアンデスへと通い続けている。


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